かつての空港が臨海公園に、歴史の一部も再利用 ギリシャ

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かつてのターミナルビルも保存される見通しだ/Sasaki

かつてのターミナルビルも保存される見通しだ/Sasaki

水不足対策として、公園には近隣工場から供給される処理済み排水が引かれる。オリンピックでカヌーとカヤックの会場に使われた3.7エーカー(約1万5000平方メートル)の湖は、豪雨であふれた水を集約する貯水池として再利用される予定だ。

こうした設計面での特徴が気候変動に強い未来づくりには欠かせないと語るのは、欧州環境機関(EEA)の気候変動・保健の専門家アレクサンドラ・カズミエチャック氏だ。「緑地は都市部の気温を下げる手段として非常に効果的だ。都市部をもっとスポンジのように設計して余分な水を吸収できれば、河川が氾濫することもなくなり、数百万~数十億ユーロの被害を出さずに済むため、経済効果も期待できる」

より健全な都市づくり

もうひとつ緑地の大きなメリットは、「心身の健康と社会的結束」への効果が期待できる点だとカズミエチャック氏は言う。緑の多い環境に暮らす人々はストレスや肥満が減る傾向にある。また緑地により騒音や大気汚染が減少し、健康にも長期的なメリットがもたらされるとも付け加えた。

ミリビリ氏によれば、緑が乏しいアテネ市にとって、大規模な緑地開発は大いに期待できる。EEAの調査によれば、欧州各国の首都の緑地面積ランキングで、アテネはワースト5位圏内だ。ここ最近、市内に緑地や「ミニ公園」を作る努力がなされてきたが、規模や自然に根差した解決策に力を入れているという点で、エリニコン・プロジェクトに匹敵するものはない。

「アテネ市民の心身の健康という点でも、ここは憩いの場所になるだろう。人口過密都市の生活バランスを立て直してくれるだろう」とミリビリ氏は言い、さほど裕福ではなく、夏の盛りに避暑へ出かける金銭的余裕のない人々にはとくに重要だと付け加えた。

エリニコン・プロジェクトであらゆる人々が恩恵を受けるだろうとグローブ氏も言う。彫刻広場、スポーツセンター、屋外劇場、飲食店、公共ビーチも併設される予定だ。50キロメートルの遊歩道と30キロメートルのサイクリングレーンもあるため、アテネ市民には積極的に地域を散策して自然と触れ合ってほしいと同氏は語る。

プロジェクトはここまで長い道のりをたどってきた。空き地を公園に変えるというアイデアは空港の廃業前から持ち上がっていたが、度重なる財政トラブルや08年の経済危機、さらには開発業者の選定をめぐる意見の対立などで、プロジェクトは何度も延期された。21年、ギリシャの不動産会社ラムダ・デベロップメント社が正式契約にこぎつけ、ササキ社を含む数人の建築家が設計に起用された。ラムダ社の推定では、公園周辺の住宅や商業施設の開発も含めると、総額費用はおよそ80億ドル(約1兆1100億円)に上るとみられる。

ようやく勢いに乗り、建築家は急ピッチで仕事に取りかかろうとしている。プロジェクトの第1段階である、中央のオリンピック広場や市営路面電車の線路、沿岸全域を含む約250エーカー(約1平方キロメートル)のエリアは25年末もしくは26年上旬に完成予定だとグローブ氏は言う。

グローブ氏は、エリニコンがニューヨークのセントラルパークのアテネ版になると思い描いている。アテネ市民の公共スペース利用法を変え、街の公衆や環境の健全化にも貢献し、時代の荒波にも耐えてゆくだろう。「アテネの歴史を考えれば、この公園も形を変えながら、1000年は存続するだろう」(グローブ氏)

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