イスラム批判の交通広告、殺害場面の写真は取り下げ
ニューヨーク(CNN) 「これはイスラム恐怖症ではない。イスラムの現実なのだ」――米ニューヨークとサンフランシスコのバスや地下鉄駅に29日、イスラム過激思想を批判するシリーズ広告が登場した。ただし、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に殺害された米国人ジャーナリストの写真を使ったデザインは、遺族への配慮から取り下げられた。
ISISは8月、米国人ジェームズ・フォーリーさんを殺害する場面のビデオを公開した。米国の反イスラム団体、AFDIは、「イスラムの現実」として過激派の残虐行為などを指摘する交通広告に、この場面の写真を使用。実行犯が過激派に加わる前の姿と並べ、「昨日の穏健派がきょうの見出しに」といった言葉とともに配置した。
しかし、AFDIのパメラ・ゲラー代表は28日、弁護士を通し、フォーリーさんの遺族からの要請に応じてこのデザインを取り下げると表明。「遺族の苦痛に追い打ちをかけるようなことはしたくない」と述べた。
フォーリーさんの母、ダイアンさんは29日、「ご配慮に感謝します」との談話を発表した。
AFDIによれば、同シリーズのほかの広告は予定通り掲示される。これに対し、イスラム系の市民団体からは「イスラム教徒への敵意をあおる内容だ」と反発する声も上がっている。
ゲラー代表は先週のインタビューで、「私の広告は反イスラム教徒ではなく、反過激思想だ」と強調し、過激思想の元にはイスラム教の経典コーランがあるとの見方を示した。同代表は2012年にも、親イスラエル・反イスラムを訴えた交通広告で物議を醸した。
ニューヨークに掲げられたシリーズ広告にはすべて、「この広告の掲示は、都市交通局が内容に賛同することを示すものではありません」との注意書きが添えられている。