米抗議デモ受け警察労組が対応、改革への抵抗懸念する声も
ワシントン(CNN) 米ミネソタ州ミネアポリス市で黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に殺害された事件を受け、全米で人種差別主義や警察による暴力に対する大規模デモが起こる中、警察組織の改革を求める声も高まっている。しかし、政治的に強大な影響力を持つ各地の警察労組の存在により、こうした改革が実際に行われるかどうかは不透明だとみられている。
米ペンシルベニア州フィラデルフィアでは8日、地元の警察労組本部前に100人を超える警官が集結。抗議デモの参加者に暴行を加えた罪などで起訴された同僚の警官に対する支援を表明した。
この警官は今月1日、大規模デモに参加していた男子大学生の後頭部を金属製の棒で殴ったとされ、その現場が携帯電話のカメラで撮影された動画に映っていた。学生は頭部の傷を糸で10針、ステープラーで10針ほど縫う重傷を負った。
集会の後で労組は声明を出し、当該の警官が「不当に職を追われるのを傍観することはない」と述べた。
フロイドさんの殺害により、黒人への警官の暴力に対策を講じるよう各地の選出議員に求める声はかつてないほど高まっている。ミネアポリスでは市議会の議員9人が7日、市警察への予算拠出を打ち切って警察を解体する意向を表明。別の警察機構に置き換える考えを示した。同市のフレイ市長も8日にABCの番組に出演し、警察労組への対応に動いていると明言した。
しかし、こうした措置を実現するのは容易ではない。米国の警察労組は他の多くの労組よりメンバーが多く、強い力を持つことで知られる。政府当局者や労組の専門家がCNNに明らかにしたところによれば、労組の各種の契約に基づき、不法行為で逮捕された警官であっても解雇するのは難しい場合が多い。こうした契約が改革を行う上での大きな障壁となっているのが実情だ。
首都ワシントンDCの警察署長などを務めたチャールズ・ラムジー氏はCNNの取材に答え、「警察労組はあまりにも強大になりすぎた。組合で政治活動委員会を立ち上げ、地区検事長や州検事、州議会議員の選挙にも影響を及ぼす」と指摘した。
一方で、世論調査の結果、アフリカ系米国人に対する警官の実力行使は過剰になる傾向があると考える人の割合は2014年の33%から現在は57%に増加している。
こうした世論を受けて、国内最大の警察労組を統括するジム・パスコ氏はCNNに対し、一般市民と警察の安全をめぐり、組織として「いつ、誰とでも事実に基づく話し合いを行う」用意があると強調。すでにそうした議論が進行していると明らかにした。