共和党大会3日目、5つのポイント
(CNN) メキシコ湾岸に危険なハリケーンが迫り、ウィスコンシン州では警官による黒人男性銃撃への抗議デモが発生する中、共和党全国大会3日目は幕を閉じた。
前日が恩赦や帰化などトランプ氏が大統領権限で実現できる利点を活用した日だとすれば、この日は出現する様々な危機に対する大統領の指導力という責務が問われる日となった。
大会のほとんどが事前収録の内容で、こうした危機への言及はなかった。生中継されたペンス副大統領の次期副大統領候補の指名受諾演説はこれらに言及したが、大半は民主党大統領候補のバイデン氏への攻撃だった。
緊急事態でのリーダーシップは大統領の再選で重要な要素となるが、トランプ氏の新型コロナウイルス流行への対応については不支持が広がっている。
ペンス氏はこの点「世界で最初の安全で効果的なコロナウイルスのワクチンを年末までに実現する予定でいる」と大胆な約束をした。
今日の大会のポイントを5つ挙げる。
危機への言及
ウィスコンシン州で黒人男性が警官から銃撃された事件を受けて、抗議デモが発生している/David Goldman/AP
ウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性のジェイコブ・ブレークさんが警官から銃撃された事件を受けて、中西部北部では抗議デモが発生し、プロバスケットボール(NBA)のミルウォーキー・バックスはプレーオフの試合をボイコットする事態となっている。
大会ではペンス副大統領がこれに言及したが、バイデン大統領候補への攻撃材料に使った。
ペンス氏は「先週バイデン氏はこの国の都市を飲み込む暴力と混乱に一言も触れなかった」「ミネアポリス、ポートランド、ケノーシャ、どこであっても暴力はやめなければいけない」と発言。「すべての人種、信条、皮膚の色の国民のために、米国の路上での法と秩序を保たなければならない」と続けた。
その後、警察内部の組織的な人種差別の存在を認めるバイデン氏の言葉にも触れた。
人種問題の認識
NBAの試合も黒人男性銃撃事件への抗議でボイコット/Kevin C. Cox/Getty Images
人種問題に対する認識について、共和党の登壇者の中にはトランプ氏の掲げる「法と秩序」の対応をたたえる人々がいる一方、黒人が直面する厳しい量刑などの問題にトランプ氏が同調してくれていると語る人もいた。
ただ、トランプ氏は前者については警察による制圧を支持し、後者については連邦の記念物を汚した者には禁錮10年を科すことに賛意を示している。
トランプ氏が人種差別主義者だという印象を払拭(ふっしょく)することはこの大会のテーマの一つと言える。トランプ氏は過去のどの大統領よりもアフリカ系米国人のために働いてきたと主張しているが、各社世論調査によると黒人有権者の間ではバイデン氏の人気が圧倒的に高い。
綱渡り
大会3日目はメキシコ湾岸にハリケーン「ローラ」が接近するさなかに開かれた。ホワイトハウス関係者によると、トランプ氏はその動きを注視しているが、この日の大会では大きな言及はなかった。
大会開始後90分以上が経過して、トランプ氏の次男エリック氏の夫人、ララ・トランプ氏が「ハリケーンの進路にあるメキシコ湾岸の州に神のご加護を」と発言したのが最初だった。その後はペンス氏が「我々は今後あらゆる局面で皆さんに寄り添い、支援や救助、対応、復興を提供する」と発言し、市民を勇気づけた。
トランプ氏の側近は、ハリケーンの襲来に対応して同氏が演説内容を変えるかについて明らかにしていない。トランプ氏はこれまで、同氏が選挙で勝利した州で災害が起きたときに、対応する姿勢をより意欲的に示してきた。今回の嵐は前回大統領選で勝利したルイジアナやテキサスに向かっている。
ハリケーンの被害状況によっては、トランプ氏が事前に準備された内容のまま演説をすると、そうした危機に対応していないとの印象を与えかねない。関係者によると、被害の状況により大会でのハリケーンへの言及を決めていくという。
トランプ氏と女性
トランプ大統領の気遣いに感動したと語るホワイトハウスのマクナニー報道官/Chip Somodevilla/Getty Images North America/Getty Images
3日目にはホワイトハウスでトランプ氏とともに働く女性が次々と登壇し、トランプ氏が普段見せない側面に言及した。
ホワイトハウスのマクナニー報道官は、乳房切除の手術を受けた後の回復期に大統領から電話をもらうなどサポートを受け感動したと述べ、「私を気遣ってくれる自由世界のリーダーだ」とたたえた。
今月末に退任するコンウェイ大統領顧問は、トランプ氏を女性の擁護者だと位置付け、「我々を信頼し、相談を持ち掛け、意見を尊重し、男性と平等だと主張してきた」と語った。
これらは多くの側近が証言するトランプ氏のプライベートな一面で、部下を気遣い、職場で女性の地位を向上させ、女性が直面する壁に気付いている男性像だ。
一方、公的な場面ではそのような場面があまり見られない。世論調査では女性、特に白人女性の間でトランプ氏の人気が落ちており、陣営は巻き返そうとしている。
トランプ氏がそう見られたい姿
党大会では民主党に政権を奪われたら破滅的な未来が来るとの警告から、経済面での楽観主義までさまざまな主張が飛び交ったが、一貫しているのは、どの登壇者もトランプ氏が普段テレビでそう描かれたいような姿で同氏を描いている点だ。
ペンス副大統領はテレビに映らないトランプ氏の姿に言及/RNC
トランプ氏は記者会見では怒りを爆発させたり、疑義のある情報を示したりするが、ペンス氏はそれとは違う姿を見ていると語る。「大統領の間近で働いてきて、カメラで映らないところでの彼を知っている」。
駐ドイツ米国大使を務めたリチャード・グレネル氏も「トランプ氏がドイツ首相をうっとりさせる様子を見た」とトランプ氏を称賛する言葉を並べた。
世界で最もパワフルな女性とも評されるメルケル氏にそうできたのかは信じがたいとしても、それはまさにトランプ氏がなりたい姿と言えるだろう。