ワクチン治験、黒人と中南米系の参加呼び掛ける新CM
(CNN) 全米の黒人や中南米系の人々に向けて、新型コロナウイルスワクチンの治験への参加を呼び掛けるテレビ・コマーシャルのシリーズが流れ始めた。
コマーシャルは、国立衛生研究所(NIH)が出資するハッチンソンがん研究所内の「COVID―19予防ネットワーク」と広告2社が共同で制作した。主要ネットワークや黒人向けチャンネルのBET、スペイン語テレビ局のテレムンドなどで8日から放送される。
シリーズのうち1本では、黒人や中南米系の人々が次々に登場して自分の上腕部を指差し、最後に治験参加の申し込みサイトが紹介される。
また、夫婦が画面の向こうの孫にスペイン語で語り掛け、母親が「いつになったら会わせてあげられるだろう」と話すコマーシャルもある。
新型コロナウイルスのワクチンは現在、米国内で3種類が治験に入っている。国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は、治験参加者の約37%を中南米系、27%を黒人にするべきだと主張してきた。だが実際にはモデルナ社が開発しているワクチンの治験は、先週の時点で中南米系の参加者が16%、黒人が10%。ファイザー社の治験は8月末の時点で中南米系が31%、黒人は8%にとどまっている。
専門家らによれば、ワクチンや薬の作用は人種や民族によって異なるため、治験参加者の多様性を確保する必要がある。だが黒人は過去に梅毒の臨床研究で非人道的な扱いを受けた経緯があったり、現在の医療現場でも差別の対象となったりするため、医学への不信感から治験に参加したがらない傾向がある。新たなコマーシャルは信頼醸成への一歩となることが期待されている。