バイデン、トランプ両氏の違い際立つ対話集会 5つのポイント

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第2回討論会が中止となった15日夜、トランプ氏(左)とバイデン氏がそれぞれ対話集会を開いた/NBC/ABC

第2回討論会が中止となった15日夜、トランプ氏(左)とバイデン氏がそれぞれ対話集会を開いた/NBC/ABC

(CNN) ABCテレビでは、米大統領選の民主党候補、バイデン前副大統領が年収40万ドル超の人たちに対する増税のプランについて説明していた。一方NBCテレビでは、共和党候補のトランプ大統領が邪悪な小児性愛者の集団の存在について、曖昧(あいまい)に返答していた。

両者が対話集会でそれぞれ取り上げた問題は、論調も中身も極端に異なるものだ。どちらも15日夜の同じ時間帯に開催されたため、米国民はそのどちらかを選んで視聴するしかなかった。

2回目の大統領選討論会がトランプ氏の新型コロナ感染を受けて中止となるなか、両候補者が代替策として同意したのが全国にテレビ中継される対話集会だった。バイデン氏はフィラデルフィアで、トランプ氏はマイアミで、それぞれ有権者からの質問に答えた。スケジュール上、両氏が直接討論する機会はあと1回を残すのみとなっている。

以下、5つのポイントから、激しい戦いの舞台となった対話集会を振り返る。

トランプ氏にとってのもう一つの現実

トランプ氏が生きているもう一つの現実世界がどういうものなのか。15日に行われた60分間の対話集会は、それをかつてないほど見事に明示してくれた。

同氏の主張によればマスク着用の効果に関する科学的な論拠はいまだ定まっていないのだが、医療に携わる専門家らは、マスクをすることでウイルスの拡散が抑えられるという見解で一致している。これらの専門家には、トランプ氏自身の政権内部にいるスタッフも含まれる。

また同氏は、民主党が邪悪な小児性愛者集団の組織を運営しているとの言説を信じるかと問われた際、肯定も否定もしなかった。ただ肩をすくめ、「見当もつかない」と答えただけだった。

同氏は証拠を示すことなく、自らの名を記した投票用紙がごみ箱の中から見つかっているとも主張した。

さらにツイッターで自らがリツイートした陰謀論めいたツイートに言及。オサマ・ ビンラディン容疑者が生きているとするその内容について虚偽だと明言することなく、「人々が自分で判断すればいい」と述べた。

これに対し、司会を務めたサバンナ・ガスリー氏は「よくわからない」「あなたは大統領であって、危ない親戚のおじさんではない」と、戸惑いをあらわにした。

トランプ氏のホームグラウンドである保守系のテレビ番組やツイッターなら、同氏の生きる倒錯した世界に触れたとしてもそれほどの驚きにはつながらないこともある。しかし、ごく普通の有権者を前にすると、同氏の回答は一般に受け入れられているいかなる現実からも大きく乖離(かいり)したものに思われた。トランプ氏かバイデン氏かを選択する有権者は、2人の候補者というよりも、まったく反対の性質を持つ2つの惑星を比べているような気分だろう。

トランプ氏対司会者

司会者の問いに対し、明確な回答を避ける場面も見られたトランプ氏/NBC
司会者の問いに対し、明確な回答を避ける場面も見られたトランプ氏/NBC

保守系メディアからは温かく迎えられるのが常のトランプ氏だが、この日、NBCテレビのステージ上に流れていた空気はことのほか冷たかった。

司会のガスリー氏は、トランプ氏が質問を避けようとするのを許さず、第1回討論会の日にトランプ氏が検査を受けたのかどうかや、白人至上主義に対する同氏の立ち位置、「QAnon(キューアノン)」と呼ばれる陰謀論や郵便投票をめぐる見解について切り込んだ。

オンラインでの討論会を拒否して自ら対話集会を選んだものの、トランプ氏にとっては攻撃対象となるライバルがステージにいない状態だった。むしろ自分の方が守勢に回っていると感じたトランプ氏は次第に不機嫌になり、ガスリー氏の質問を小ばかにするような態度も見せた。

対話集会の参加者からの質問に対しては、比較的穏やかに答えた。ただ最後の質問として、同氏に2期目を託すことの根拠を問われた際には、今後の方針を示すのではなくこれまでの実績を列挙するのに終始。「来年はかつてないほどよくなる」との言葉で締めくくった。

バイデン氏は政策中心

対照的にバイデン氏は、具体的な政策を明示するアプローチで対話集会に臨んだ。

若い黒人の男性から、黒人の有権者に対して黒人を守れない現行のシステムに参加すべきだとどうやって説得するのかという質問を受けると、数分間にわたって黒人を支援するための政策に言及。低所得地域にある学校向けの連邦政府予算を3倍にする取り組みや、1軒目の住宅購入者に対する財政支援、黒人を対象に開設された大学群への新たな資金注入、若い黒人の起業家に向けた政府保証の融資を挙げた。

さらに聞きたいことがありそうな様子を見せた男性に対し、バイデン氏が集会が終わった後で続きを話そうと提案する一幕もあった。

この日はバイデン氏が長い時間をかけて質問に答える姿が多く見られた。そこには対話集会を通じ、自らの計画が普通の米国民にどのような影響をもたらすのかを伝えようとする姿勢が如実に表れていた。大言壮語しない生真面目さと中低所得層への気遣いによって、トランプ氏との大きな違いを有権者に印象付ける狙いがあるとみられる。

最高裁判事増員への立場は「今後の展開次第」

バイデン氏は具体的な政策論で聴衆にアピール/JIM WATSON/AFP/AFP via Getty Images
バイデン氏は具体的な政策論で聴衆にアピール/JIM WATSON/AFP/AFP via Getty Images

連邦最高裁判事の増員をめぐる問題について、バイデン氏は自らの立場を明確にしなかったが、選挙日の前にはこれを明らかにすると強調した。

連邦最高裁のギンズバーグ判事死去に伴いトランプ氏がエイミー・コニー・バレット連邦控訴裁判事を後任に指名して以降、この問題で積極的に発言していないとの見方に対しては、最高裁の増員案の熱心な支持者ではないと説明。それでも「今後の展開次第で」最終的に姿勢は変わるとし、バレット氏承認に関する上院での議論を見届けたうえで、大統領選の前に立場を明確にすると述べた。

その理由については、今はバレット氏の承認や保守派判事が6対3と多数派になる状況が妊娠中絶や医療保険、同性愛者の権利にどんな影響を与えるか、国民に注視してもらいたいからだと説明。「私がすぐに答えを出したら、そこにだけ注目が集まる」として、国民の目をそらす大統領の常とう手段には乗りたくないとの警戒感をにじませた。

新型コロナをめぐる新事実

新型コロナ感染によるトランプ氏の入退院後、同氏の肺の状態や1回目の討論会の時点で陰性だったのかどうかについては今なお答えが出ていない。

対話集会で、肺炎と診断されたのかと直接問われたトランプ氏はこれを否定。しかし、医師から肺が多少影響を受けたと告げられていたことは認めた。入院時のトランプ氏には酸素補給が必要だったとされているが、実際に本人が肺に影響があったと明かしたのはこれが初めてだ。

感染の診断を受ける前、最後に検査で陰性結果が出たのはいつかとの質問に対し、トランプ氏は極めて頻繁に検査を受けていると述べて回答を避けようとした。しかし第1回討論会の日に陰性だったのかと尋ねられると、「知らない。覚えていない」と答えた。

この回答は、以前情報筋がCNNに語った内容を裏付ける。つまり、ホワイトハウスが長らくコロナ封じ込め策の要諦と持ち上げてきた検査システムは、言われるほど徹底したものではなかったということだ。

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