自宅に入ろうとした黒人男性、保安官代理が射殺 米
(CNN) 米中西部オハイオ州コロンバスで先週末、逃亡犯を追う任務に当たっていた保安官代理が自宅に入ろうとした黒人男性を射殺した。当局が9日までに明らかにした。男性は追跡対象の人物ではなく、連邦捜査局(FBI)が捜査を開始した。
事件が発生したのは4日で、射殺されたのはケーシー・グッドソンさん(23)。撃ったのは勤務歴17年のフランクリン郡保安官事務所のジェーソン・ミード保安官代理で、連邦保安局の逃亡犯追跡の特殊部隊に従事し、発砲当時は暴力犯を追っていた。
家族の代理人ショーン・ウォルトン弁護士によると、グッドソンさんは射殺される前に玄関に鍵を挿していた。撃たれた後にキッチンに倒れ、5歳の弟と72歳の祖母がサブウェイのサンドイッチとともに横たわるグッドソンさんを目撃した。
コロンバス警察によると、グッドソンさんは銃を隠して所持する許可を保有し、発砲時には合法的に武器を所持していた。ウォルトン氏は、グッドソンさんの犯罪歴はなく、いかなる捜査の対象にもなっていなかったと述べた。
警察によると、ミード保安官代理は任務中に銃を所持した男性を発見と報告し、状況を調べていたという。発砲の前には言葉のやり取りがあったとしている。
他に発砲を目撃した警察官はおらず、民間人の目撃者も見つかっていない。フランクリン郡保安事務所は特殊部隊の隊員にボディーカメラを支給していないため、カメラの映像もない。
CNNは保安官事務所にコメントを求めたが、返答は得られていない。
ウォルトン氏は当局が家族に説明し、関与した警官に説明責任を果たさせる必要があるとの認識を示した。
コロンバス警察はミード保安官代理の発砲が法的に正当と評価できるか捜査を進める。その後フランクリン郡検察官に証拠が提出され、起訴を判断する大陪審へと送られる。
警察に加え、オハイオ州南部地区連邦検事とFBIも連邦公民権法違反の捜査を開始した。コロンバス警察のトーマス・キンラン署長は、これにより「最大限の透明性と真実への明確な道が確保される」と語った。
警察官による射殺は地元の黒人コミュニティーを揺るがせている。週末の11日と12日には事件での正義の実現を求める集会がコロンバスで予定されている。
地元の公民権活動家は、コロンバスでの警官による黒人への暴力行為は今に始まったことではないと語る。
同市では近年、警察官により黒人男性や未成年者が死亡する事件が相次いでいる。2018年12月には16歳の少年がおとり捜査中の警官に射殺された。17年7月には30歳男性、16年9月には13歳少年が射殺された。16年6月には23歳男性が私服警官に射殺される事件も起きている。
活動家の1人はグッドソンさんが「処刑された」と述べ、権力の大規模な再編成が必要だと主張。警察予算を削減し、一部の人ではなく全員の命に配慮する公共安全の新たなシステムの創設にリソースを投下すべきだと語った。
別の活動家は、今夏の警察の暴力や人種差別への全国的な抗議運動に参加した後、黒人市民は疲労感を感じていると言及。「無力感、希望のなさ、傷ついた感情にさいなまれている。私たちのしたことはまるで全て無駄だったようだ」と語った。
コロンバスの人種間の緊張は警察活動によるものだけではない。黒人地区の隔離や再開発も要因となっている。カナダ・トロント大学の研究によると、人口の59%が白人、28%が黒人のコロンバスは、全米で4番目に経済的な隔離が進んでいる大都市圏と位置付けられている。