ウクライナ生まれの米共和党議員、祖国の政府を痛烈批判 同僚から「乱暴者」と苦言も
ここへ来てスパーツ氏は、国防強硬派にとってもある種厄介な存在となりつつある。彼らはすでに、国外で続く戦争に対する倦怠(けんたい)感が米国内で生まれるのを懸念している。また同氏がウクライナ批判を続ける中、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」をスローガンに掲げる共和党の一派からは、ウクライナに兵器と支援物資を送り続けることについて懐疑的な見方が出てきてもいる。
スパーツ氏自身は、ウクライナへの兵器などの迅速な供与を可能にする重要法案成立を強く支持してきた。ウクライナ向けの兵器に対するより厳格な管理も呼びかけており、これには議員らも党派を超えて賛同している。その強い物言いに不満を抱きつつ、祖国を救いたいという必死さの表れだとしてスパーツ氏の擁護に回る議員も一部にはいる。
スパーツ氏はCNNへのメールで自らの情報源について説明。情報の入手先は現地にいる真のプロフェッショナルたちであるのが常で、ウクライナに足を踏み入れたこともない学者や雇われ政治家たちからではないとした。またロシアのプーチン大統領の術中にはまっているのはいわゆる「外交エリートたち」であって自分ではないとも付け加えた。
「人々の命も深く気にかけている。ごく普通のウクライナ人と、勇敢なウクライナ軍の命を。たとえ受けの良くない真実を口にして政治家たちを怒らせたり、大衆受けする今どきの言説から離れていくとしても、そうした人々を失望させることはできない」「決してあきらめないし、負けを認めるつもりもない。ウクライナを1つにし、ウラジーミル・プーチンを倒すため、できることは何でもやる」(スパーツ氏)
米軍制服組トップと会談
スパーツ氏は米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長との会談も要請した。米政治専門サイト「ポリティコ」が最初に報じたこの会談で、スパーツ氏は改めてウクライナ国内の汚職に関する懸念に言及。米国の供与した兵器が本来向かうべきところに行っていないと主張した。
情報筋によれば、ミリー氏はスパーツ氏の懸念を完全には否定しなかった。米国の当局者らは、依然として汚職がウクライナ国内における問題であり続けているとみている。最近ウクライナ側と交わした電話会談の中で、ミリー氏とサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ブリンケン国務長官は、ウクライナが国内の汚職に関して「自分たちの改革政策を実行し続けることが重要だ」と指摘。「戦争により複数の課題が生じていようと」、その点は変わらないと論じた。ホワイトハウスが提供した電話会談の要約から明らかになった。
とはいえ全体を通してミリー氏は、スパーツ氏の懸念が度を越したものであることを本人に説明したと、上記の情報筋は述べた。スパーツ氏はCNNに対し、ミリー氏について、当該の会談以前にも話し合う機会があったと明かした。自分の意見に耳を傾けてくれる相手として信頼しているとも述べた。
ミリー氏との会談から数日後、スパーツ氏はなおもゼレンスキー氏の最側近の1人を糾弾。「戦争の継続を装い、独裁そのものの体制を作り上げている」と非難した。
下院共和党トップのマッカーシー院内総務はCNNの取材に答え、スパーツ氏のウクライナ政府批判について個人的に本人と話をしたことはないと述べた。ただこの問題に対するスパーツ氏の熱意は、戦争への注目を集めることに寄与したと称賛。とりわけ紛争開始当初はそうだったと指摘した。
そのうえで、スパーツ氏自身の家族がウクライナにいるという事情から、本人がこの問題に極めて強い感情を抱いていることは理解する必要があると語った。