米供与のハイマース、ロシアの電波妨害で精度低下 ウクライナは対策強いられる
ワシントン(CNN) ロシアが米国製の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」を妨害するケースがここ数カ月で増えていることが分かった。ジャミング(電波妨害)を駆使してGPS(全地球測位システム)による誘導を狂わせ、ロケット弾の目標命中を阻止しているという。
この問題について報告を受けた複数の関係者がCNNに明らかにした。
ウクライナ軍はハイマースの使用を続けており、米国の助けを借りて様々な回避策を講じざるを得ない状況にある。ハイマースはウクライナの戦いでおそらく最も畏怖(いふ)される兵器となっている。
中距離ロケットシステムのハイマースは戦況を一変させるゲームチェンジャーとうたわれ、昨年夏にウクライナに引き渡されて以降、重要な役割を担ってきた。ウクライナがロシアから広範な領土を奪還した昨年の攻勢でも使用された。
しかし米英やウクライナの情報筋5人によると、ここ数カ月、ロシアの集中的な妨害により同システムの有効性は低下している。米国やウクライナの当局者は巧妙さを増すロシアのジャミングに対抗するため、ハイマースのソフトウェアを調整する方法を模索することを余儀なくされているという。
米国防総省のある当局者は「絶えずイタチごっこが続いている」と説明。ジャミングへの対策が見つかっても、ロシアはその対策に対抗する措置を繰り出してくると指摘した。
ウクライナの大規模反攻が近く始まるとみられる中、ハイマースへの依存度の高さを踏まえると、ウクライナ軍が戦果を挙げるにはこの問題の解決が一層重要になりそうだ。
ウクライナはこれまでに米国からハイマース18基を受け取り、米国は20基の追加供与を約束している。米国務省によると、他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国からは多連装ロケットシステム10基が供与された。
GPSジャミングは榴(りゅう)弾砲から発射される精密誘導砲弾「エクスカリバー」や、空から投下される「JDAM(統合直接攻撃弾)」のようなスマート兵器にも影響を与えうる。国防総省の流出文書によると、JDAMは特に妨害の影響を受けやすいという。