米共和党の第2回候補者討論会、主なポイント
(CNN) 2024年米大統領選の共和党候補指名争いに参戦する候補者らが27日夜、カリフォルニア州にあるロナルド・レーガン記念図書館で開かれた第2回討論会に臨んだ。支持率争いでトップに立つトランプ前大統領は、第1回に続いて参加を見送った。
7人の候補者が残した数少ない印象的な瞬間の中で、前サウスカロライナ州知事のニッキ・ヘイリー氏は、起業家のビベック・ラマスワミ氏に対する不満を表明。「正直なところ、あなたの話を聞くたびに少しばかり唖然(あぜん)とした気分になる」と告げた。
フロリダ州のデサンティス知事と前ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏は、共に討論会を欠席したトランプ氏を批判。それぞれ「行方不明」、「ゴルフクラブの中に隠れている」などと発言した。
サウスカロライナ州選出の上院議員、ティム・スコット氏はバイデン大統領に言及。ミシガン州で全米自動車労組(UAW)のストに参加するのではなく、不法移民問題を抱える南部の国境地帯を視察するべきだと指摘した。マイク・ペンス前副大統領もバイデン氏は「失業者の列に並ぶ」べきだと発言し、ノースダコタ州のダグ・バーガム知事はバイデン氏が「自由市場」に干渉していると批判した。
しかしながら今回の討論会の展開が、共和党の指名獲得争いの趨勢(すうせい)を変える公算は小さい。そこではトランプ氏が依然として優位に立つ。全米でも予備選初期の州でも、世論調査はそうした結果を示している。
また往々にしてまとまりが付かず、流れを追いにくい候補者らの議論の応酬には、多くの視聴者がチャンネル自体を途中で変えた可能性がある。
以下、2回目の討論会で見えてきたポイントを挙げる。
トランプ氏の安全策が功を奏す
トランプ氏は安全策をとって討論会を欠席した可能性がある。現職の大統領のような立ち位置で、来年の共和党予備選を戦う作戦かもしれない。
ただ共和党の有権者から見て、27日の乱雑な論戦に加わらなかったことで同氏がどのように重い代償を支払うことになるのかは判然としない。
ライバルたちはトランプ氏にいくつかの打撃を与えた。クリスティー氏はトランプ氏について「我々の党を分断しただけでなく、米国中の家族を分断した。米国中の友人たちを分断した」と非難。共和党の指名候補を選ぶプロセスから同氏を排除する必要があると主張した。
しかしながらトランプ氏は大統領任期中の4年間に関して、ライバルから厳格に検証される状況をほとんど免れている。ライバルたちが支持を得たい有権者らは、トランプ氏の政権をおおむね前向きに捉えているからだ。
「今夜の共和党の討論会は、1回目と同様に退屈で取るに足らないものだった。予備選の情勢を変えるような発言は全くなかった」。トランプ氏の陣営の幹部を務めるクリス・ラシビタ氏は声明でそう述べた。
ラマスワミ氏にたたみ掛ける候補者たち
壇上の候補者の何人かは、1回目の討論会と同じ轍(てつ)を踏むのを望まなかった。前回はラマスワミ氏が強力な論客、ショーマンとして、存在感を発揮していた。
討論の序盤、スコット氏はラマスワミ氏のビジネス記録に言及。そこには中国共産党や、バイデン氏の息子のハンター氏へと流れる資金とのつながりが含まれていると指摘した。目に見えて不機嫌になったラマスワミ氏は、壇上の候補者全員を称賛する態度を切り替え、自身のビジネス記録の擁護に回った。
この少し後にはペンス氏がラマスワミ氏に対して、中国との事業契約から手を引いたのをうれしく思うと告げた。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の使用にまつわる質問にラマスワミ氏が答えた際には、ヘイリー氏がすかさず反応。「あなたの話を聞くたびに少しばかり唖然(あぜん)とした気分になる」「あなたは信用できない。信用できない」と強調した。ラマスワミ氏が協調的な姿勢に戻ろうとすると、スコット氏が口をはさんでそれを妨げようとした。
医療問題の質問で反応分かれる
トランプ政権で医療保険制度改革(オバマケア)撤廃の公約を守れなかった点を問われると、ペンス氏は一つ前の銃暴力に関する質問に答えるのを選んだ。司会者が重ねてオバマケアについて質問したが、ペンス氏はやはり回答を避けた。
司会者はデサンティス氏に対しても、フロリダ州の州民250万人が健康保険に加入していない理由を説明するよう求めた。同氏はインフレに言及したが、それだけではフロリダ州の保険非加入率が全米最高水準である説明がつかないと問われると、満足な答えを返せなかった。
その後で同氏は、州の人口の急増と、福祉給付の水準の低さに触れた。
一方、ヘイリー氏は医療問題を論じる準備ができていたようだ。医療費の透明性を高めて、保険業者の力を弱めることに賛成の立場を示した。また訴訟ルールを見直して医師の提訴を困難にする措置にも言及した。
最初の1時間は混乱
討論会の最初の1時間は、発言の妨害や言い合いが散見された。発言時間を巡って候補者と司会者がつまらない言い争いを長々と続ける一幕もあった。
視聴者の立場からはもちろんのこと、欠席したトランプ氏に代わる有力候補としてアピールしたい候補者たちにとってはさらに厳しい状況になった。
事態をより複雑にしたのは、支持率上位に位置するデサンティス氏とヘイリー氏が最初の1時間の論戦に飛び込む様子をほとんど見せなかったことだ。司会者は再三、デサンティス氏が議論に加わる状況を作ろうとしていたが、肝心の本人は最初の15分間ほぼいないも同然だった。
ここである程度健闘していたのはラマスワミ氏だ。声の大きさで(口の早さでも)大半のライバルを上回った。しかしそんな同氏も、自身の論点に話が及ばない時や、スコット氏など不満を募らせたライバルから一斉に批判を浴びた時にはなす術がなかった。
司会者のチームも、最初の30分で場をコントロールできなかったという点で批判を受ける公算が大きい。とはいえ、混乱した討論であっても、有権者にとっては参加した顔ぶれについて何かしら伝わる部分はあるものだ。
デサンティス氏は引き続きトランプ氏を攻撃
討論開始から16分が経過したところでようやく口を開いたデサンティス氏は、共和党候補の支持率でトップに立つトランプ氏を一段と厳しく攻撃した。内容は過去数週間での発言と同じものだった。
デサンティス氏はまずバイデン氏を念頭に、国の経済を主導するはずのリーダーが「完全に行方をくらましている」と主張。それこそがインフレや自動車労組のストの原因だと批判した。
「そして他にもいるだろう? 行方不明の人間が。ドナルド・トランプがどこにもいない」「彼は今夜、このステージに立つべきだ。彼は皆さんのために自らの記録を擁護する義務がある」(デサンティス氏)
最初にCM入りした35分まで、他にトランプ氏への批判を口にした候補者はクリスティー氏だけだった。
壇上にいない人物を攻撃したデサンティス氏だったが、後には他の候補者たちに対しても苦言を呈した。互いに言い争うばかりで、種々の争点やバイデン氏に議論を集中していないというのがその理由だ。ただやり取りの多くはおおむね行き場を失い、候補者たちがそれぞれに応酬を繰り広げる状況が続いた。