バイデン米政権高官がアジア歴訪、引き続き中国重視を示す

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米国のブリンケン国務長官(左)とオースティン国防長官。米政権高官が今週、インド太平洋地域を歴訪する/AP/Getty Images

米国のブリンケン国務長官(左)とオースティン国防長官。米政権高官が今週、インド太平洋地域を歴訪する/AP/Getty Images

ワシントン(CNN) バイデン米政権の国家安全保障の責任者が今週相次いでインド太平洋地域を訪問している。ますますきな臭くなる中東情勢の対応に追われつつも、引き続き対中国戦略が優先事項であることを示唆している。

ブリンケン国務長官、オースティン国防長官、米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長はいずれも今週、インド太平洋地域を歴訪し、パートナー国や友好国との会談を予定している。ブラウン統合参謀本部議長にとっては、9月の就任以来初の外遊だ。

オースティン国防長官は8日に出発し、10日間の日程でインド、インドネシア、韓国を訪問する。すでに先週米国を発ったブリンケン国務長官は、10日間にわたってイスラエル、ヨルダン、トルコ、韓国、日本を回り、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区にも立ち寄ってパレスチナ自治政府の幹部と協議する予定だ。

ブリンケン長官とオースティン長官はそろってインドへ向かい、米印の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)に出席する。

米政府関係者はここ数年、中国が米国の最大ライバルであると強調してきた。昨年の国家安全保障戦略でも、「米国にとって最も重大な地政学的課題」と位置づけられている。

ここ1年半、とりわけ2022年8月に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問したころから米中関係は悪化した。今年に入ってからも中国の偵察気球が米国上空を飛行して物議を醸し、ごく最近では中国軍の戦闘機が南シナ海上空で米空軍のB52爆撃機と10フィート(約3メートル)の距離まで接近する出来事もあった。国防総省のラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は先月、中国軍パイロットが米軍機に「威圧的で危険な」ふるまいをするケースが過去2年間、東シナ海と南シナ海で急増していると発表した。その数は過去10年間合わせた総数を上回っているという。

一方、しばらく途絶えていた米中間の対話は、この夏、ブリンケン長官が北京で中国政府幹部と会談したのを機にようやく再開した。だが太平洋地域の米軍関係者はいまだに中国側と連絡が取れない状態だ。

インド太平洋軍のアキリーノ司令官が先月語ったところでは、中国側に「2年半にわたって対話を求めてきた。いまのところ一度も返答をもらっていない」。

オースティン長官は22年、第10回拡大ASEAN国防相会議で中国国防相と会見した。今年はインドネシアで開催されるが、両国の協議が実現するかは明らかになっていない。中国の李尚福前国防相は2カ月ほど公の場に見せなくなった後、10月に解任された。

国防総省のライダー報道官は6日、今回の歴訪中に中国政府関係者との会合の可能性はあるのかというCNNの質問に対し、「公表できること」はないと答えた。

国防総省幹部は今回のオースティン長官の外遊について、アジア太平洋地域の安定化を強化する上でも、また米国がいっぺんに複数の地域に目を光らせることができることを示す上でも「非常に重要だ」と述べた。今回の訪問は「ずいぶん前から予定されていた」とも付け加えた。

同様に、クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)も今週記者団に対し、国務省は引き続き「インド太平洋地域に細心の注意を払っている」と発言した。

「インド太平洋地域の平和と安全は、米国の平和と繁栄、安全保障の中核であり、不可欠であることはこの先も変わらない。当然ながら、世界がこのような困難に直面している中でも、国務長官がこの地域を再訪したことがそれをさらに物語っている」(クリテンブリンク国務次官補)

ブリンケン長官の外遊と時を同じくして、バイデン政権はイスラム組織ハマスを相手に戦うイスラエルを支持したことで、次第に強い風当りを受けている。またイラクやシリアでは、イランの支援を受けた民兵組織が定期的に米軍を攻撃し続けている。

先月7日のハマスによるイスラエル奇襲の生々しい画像や動画を目にしたブリンケン長官は3日の記者会見で、攻撃の残忍さについて「やはり人間の理解の範疇(はんちゅう)をほとんど超えている」と述べた。だが米国はこれまで同様、「打倒ハマスのもと軍事活動を行うイスラエルが、どのような手段で実行するかが重要だと明確にしている」とも発言した。

「なぜ重要かといえば、正当で法を順守しているからだ」とブリンケン長官は述べた。「それを怠れば、ハマスや他のテロリスト集団の思うつぼになってしまう」

ブリンケン長官とオースティン長官がパレスチナ自治区ガザ地区での動向に加え、イラクとシリア情勢についても引き続き関与していくのは間違いない。イラクとシリアでは6日の時点で、米軍部隊が38回以上攻撃されている。そうした中、今回の歴訪は米国が最優先事項を見誤っていないことを強調するねらいがある。

政権高官の歴訪と合わせて、今月サンフランシスコで予定されているバイデン大統領と習近平(シーチンピン)国家主席の首脳会談の準備も進められている。両首脳が最後に顔を合わせたのは22年11月で、インドネシアで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて3時間ほど会談を行った。

ホワイトハウスのジャンピエール報道官は「建設的な会談になるだろう。大統領も心待ちにしている」と述べた。

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