ANALYSIS

無所属で出馬のロバート・ケネディ・ジュニア氏、米大統領選の行方を変えるか

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無所属での大統領選出馬を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏

無所属での大統領選出馬を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏

(CNN) 米大統領選挙では民主党員、共和党員のいずれかが当選する。この世でこれほど確かなことはない。この国では第3政党や無所属の候補が勝利を収めることなどめったにない。今から1年後には、おそらく民主党のジョー・バイデン氏と共和党のドナルド・トランプ氏のどちらかが当選することになるだろう。

だからといって、最新の世論調査の数字を一蹴するのは愚かだろう。無所属で出馬するロバート・ケネディ・ジュニア氏が、無所属あるいは第3政党の候補者としては久方ぶりの高支持率を集めているのだ。同氏や二大政党に属さない他の候補者が、2024年の米大統領選挙の行方を左右する可能性が現実味を帯びてきた。

クイニピアック大学が行った最近の世論調査を見てみよう。ケネディ氏は登録有権者から22%の支持率を集めている。非常に高い数字だと感じた筆者は、さっそく過去の世論調査をひもといてみた。

大統領選を1年以内に控えた時点で支持率が20%以上だった直近の無所属候補者は、1992年に出馬したロス・ペロー氏だ。ペロー氏の最終的な得票率は19%だった。

投票日が近づくにつれ、無所属や第3政党の候補者は尻すぼみになるのが常だが、その点ペロー氏は例外といえる。80年の大統領選ではジョン・アンダーソン氏が支持率20%を集めたものの、本選のある11月はわずか7%だった。68年に第3政党から出馬したアラバマ州のジョージ・ウォレス元知事の場合、選挙シーズン前の支持率は21%だったが、いざ投票が始まると14%に落ち込んだ。

だが二大政党以外の歴代候補者の中で、本選まで1年というタイミングで20%以上の支持率を集めたのが先の3人だけというのは驚きだ。そして今、この選ばれし集団にケネディ氏が加わったというわけだ。

さらに、前述の3人の候補者は最終的な決戦投票で(10%とまではいかないものの)5%以上の得票率を獲得している。

当然ながら、ケネディ氏がこの先どう転ぶかはわからない。だが激戦州での同氏の支持率は注目に値する。米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が行った世論調査によると、2020年の大統領選挙でバイデン氏がトランプ氏に勝利した6州(ジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ネバダ州、ミシガン州)で、ケネディ氏の支持率は10%後半から25%以上だ。

このニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査が特筆すべき理由には、民主党の一部を混乱に陥れ、共和党の一部を悦に入らせたということもある。激戦州のうち5州の登録有権者、および4州の投票する可能性の高い有権者の支持率を見ると、トランプ氏がバイデン氏を大きく上回っていた。

仮に本選の結果が世論調査と一致すれば、トランプ氏の当選ということになるだろう。

だが、投票する可能性の高い有権者の選択肢の中にケネディ氏が入ると、トランプ氏の支持率がバイデン氏を上回るのはジョージア州とネバダ州の2州だけになる。トランプ氏はアリゾナ州とペンシルベニア州でバイデン氏に5ポイント差でリードしていたものの、ケネディ氏が加わるとリードは消えて同率で並ぶ。バイデン氏はというと、ペンシルベニア州では誤差の範囲でリードしている一方、ミシガン州ではトランプ氏と肩を並べている。

別の言い方をすれば、トランプ氏が大量リードしているように見える支持率も、ケネディ氏の登場でかき乱され、選挙人を確実に取れるとは言えなくなる。激戦州6州全体で見た支持率は、バイデン氏が34%、トランプ氏が36%と、いずれも40%に届いていない。

無所属候補者が有権者から大量の票を奪う可能性があることは、さして驚くことでもない。ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査によると、バイデン氏、トランプ氏ともに不支持率は50%後半にさしかかっている(他の世論調査でも同様)。世論調査が始まって以来、民主党・共和党の指名候補者で最低支持率を記録した16年大統領選のヒラリー・クリントン候補とトランプ候補と並ぶ数字だ。

これらをすべてふまえると、他にも無所属や第3政党から24年大統領選に出馬する、あるいは出馬をにおわせる候補者が出てきても驚きではない。

無所属で出馬しているコーネル・ウェスト氏の最新の支持率は、クイニピアック大学の世論調査で6%、CNNと調査会社SSRSが行った世論調査で4%だった。

今月9日にはジル・スタイン氏が、24年の緑の党指名候補選に立候補すると発表した。16年の大統領選で同氏の得票率は1%前後だったが、トランプ氏がクリントン氏に僅差(きんさ)で勝利したミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州では、トランプ氏とクリントン氏の票差を上回る得票を得ていた。

同じく9日にはウェストバージニア州選出のジョー・マンチン上院議員が、来年の上院議員選への再出馬を見送ると明らかにした。同氏は今年に入ってから、第3政党での大統領選出馬をほのめかせていた。公共宗教研究所(PRRI)が行ったこの夏行った世論調査によると、無所属候補者としてマンチン氏は10%の支持率を集めていた。

さて、二大政党に属さない候補者が当選する確率はほぼゼロだ。だがこうした候補者を語る上で、そこは問題ではない。

こうした候補者が注目に値する理由は、二大政党から大量の票を奪うことになるのはほぼ間違いないからだ。米国民の多く二大政党に幻滅している。最終的な当選者が、得票数で過半数をはるかに下回る場合もありうる。

ケネディ氏をはじめとする候補者が20%以上の支持率を集めている事実を勘定にいれない政治アナリストは、24年大統領選の予兆を見逃していると言ってもいいだろう。

本稿はCNNのハリー・エンテン記者による分析記事です。

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