「凍結胚は子ども」 州最高裁判断が招いた混乱、保存された凍結胚の未来は 米アラバマ州
(CNN) 米アラバマ州の最高裁判所が凍結胚(はい)(受精卵)を「子ども」とみなす判断を示したことを巡り、不妊治療を受ける患者やクリニックに影響が広がっている。
同州バーミンガム地域に住むクリスティア・ランブリーさん(44)は、地元の不妊治療クリニックに凍結胚3個を保存している。1人目の出産後に続発性不妊症と診断されたランブリーさんは、夫と相談して体外受精を選び、2016年に双子が誕生、21年にはもう1人の子どもが生まれた。
この過程で凍結胚3個が使われずに残り、ランブリーさん夫妻はどうするか決めるまで保存することにしていた。
アラバマ州で保存されている凍結胚の数は不明だが、凍結卵子や胚の管理を手がけるTMRWライフサイエンス社によると、全米で保存されている凍結卵子や胚は100万を超すと推定される。
しかしアラバマ州最高裁の判断を受け、そうした凍結胚や体外受精の未来が大混乱に陥った。一部の議員が体外受精を守ろうとする一方で、州内のクリニックは体外受精を中止し、ランブリーさんのような患者は凍結胚を他州へ移そうと急いでいる。
体外受精は1970年代に開発されて以来、子どもができない夫婦や代理母を使っていた夫婦のための不妊治療として定着した。米国では子どもの2%前後が体外受精を通じて誕生している。
体外受精では卵子を患者の体内から取り出して体外で受精させ、胚を患者の子宮に戻して妊娠を目指す。しかし受精する卵子はごく一部にすぎず、成熟胚となる卵子はさらに少ない。
このため医師は必要以上の卵子を受精させることがある。場合によっては胚をすぐに子宮に戻さずに凍結することを望んだり、がんの治療を受ける前に卵子や胚の凍結を望んだりする患者もいる。
しかし州最高裁が凍結胚を子どもとみなす判断を示したことで、そうした凍結胚を破壊すれば責任を問われる可能性が生じた。