トランプ米政権、対外援助を一時停止 人道担当官が「死者が出る」と危機感
(CNN) トランプ米政権が突如として対外援助を一時停止した措置を受け、このままでは死者が出るとして人道援助担当官が危機感を強めている。
対外援助のほぼ全面的な一時停止はマルコ・ルビオ国務長官が指示。世界の健康医療支援から緊急避難施設の提供、人身売買対策に至るまで、米国の対外援助がほぼ全面的に停止される。
「前代未聞の」指示を受けて支援団体は対応に追われ、米政府から明確な答えを引き出そうとして苦慮していると、6人以上の担当官がCNNに語った。
対外援助の凍結は、24日の外交公電でルビオ長官から伝えられた。検証を待つ間、現在行っている取り組みの即時停止、資金拠出の停止、今後のプロジェクトを中止するとする内容。例外として、緊急食糧援助とイスラエルおよびエジプトへの軍事費援助は除外するとした。
人道援助担当官によると、援助凍結の影響は既に出ており、壊滅的な結果を招く恐れもある。ある担当官は、一時停止があと2週間続くだけで、数千人の死者が出ると予測した。もしも凍結が続いた場合、膨大な数の援助団体が職員の確保に必要な資金を受け取れず、恒久的な閉鎖に追い込まれかねない。
担当官らは議員などを通じて問い合わせているものの、答えがなかったり、食い違ったりしているという。政府関係者の多くは、もしも自分が援助凍結を疑問視したりかわそうとしたりしていると見なされた場合、トランプ政権からの報復が怖いと語った。27日には対外援助を担う国際開発局(USAID)の幹部職員約60人が突如として有給休暇扱いとなり、職員には長官代行から「大統領令と米国民からの命令をかわそうと画策したと思われる行為がUSAID内部で複数確認された」と告げられた。
不安定な停戦状態が続くパレスチナ自治区ガザ地区では、援助の凍結によって、1日あたりトラック600台分の援助を届けることができなくなるのはほぼ確実だと当局者は危機感を募らせる。ある援助団体の当局者は、ガザの境界内外で待機しているトラックの援助物資を届けることが許されるのかどうか分からないと語った。
別の当局者は28日、ガザの住民数万人に衛生用品や緊急避難所を提供する活動や、給水システムの復旧と給水トラック運営の活動を一時停止せざるを得なくなったと話した。
別の人道担当官によれば、活動停止命令によって、マラリアなどの疾病対策に必要なワクチンを配布することもできなくなっている。
栄養プログラムやHIV・エイズ治療、妊婦や子どもの医療も停止を強いられているという。
凍結の影響は人道援助や公衆衛生対策にとどまらない。地雷の除去や、麻薬の違法取引、人身売買などへの対策を支援する資金も凍結された。ウクライナや台湾といった同盟国の援助もストップしている。
今回の援助凍結は、米国をより安全で繁栄した国にするというルビオ長官の言葉に反すると人道担当官らは指摘し、「経済的な観点からも、国家安全保障の観点からも、人道的観点からも、これは米国の安全と繁栄と安心を低下させている」と話す。
米国は約束を守らないという認識が既に形成されているという担当官や、米国のプレゼンスがなければ、別の国や組織がその空白に踏み込もうとするだろうと話す担当官もいた。