北朝鮮で深刻な覚醒剤蔓延か、対中国境で目立つ 報告書
香港(CNN) 北朝鮮問題に関する専門誌「North Korean Review」は1日までに、北朝鮮内で「アイス」と呼ばれる覚醒剤の蔓延(まんえん)が深刻化し、対中国境付近の成人住民のほぼ全員が使っているとの情報もあるなどと報告した。
今年の春季号の中で伝えたもので、中国当局が対北朝鮮国境付近の監視を強化したことを受け、北朝鮮内にいる覚醒剤の材料メタンフェタミンの密造者が国内での密売拡大を図っているとも分析した。
同誌の報告書を共同作成した韓国・梨花女子大学の教授はオーストラリアのABCテレビの取材に、覚醒剤は医療制度が機能せず処方薬の入手が難しい北朝鮮内で苦痛緩和剤の代わりとして使われる場合もあると指摘。いったん覚醒剤を使えば、断ち切ることが出来なくなると述べた。
北朝鮮当局は国内の薬物中毒患者の公式統計は公表していない。同教授は覚醒剤蔓延の規模についての統計的な検証は無理としながらも、2009年以降の脱北者を中心に面談に応じた情報提供者はほとんど全員がこの問題に触れたと指摘。
脱北者らによると、覚醒剤はレストランで注文し、容易に入手出来る。客には政権高官や警官もいるため取り締まりは難しいという。
ただ、値段は高い。覚醒剤の蔓延は中毒者らが購入のための十分な金を持っていることを意味せず、有り金全部をつぎ込んで覚醒剤を追い求める惨状が生まれている。
核開発疑惑などで国連の経済制裁を受ける北朝鮮は外貨獲得に躍起で、純度の高い覚醒剤の密売はその手段の1つとの指摘もある。この他、武器取引や紙幣偽造などの違法行為への関与も取り沙汰される。
これらの違法行為を仕切るのは朝鮮労働党の下部機関で活動内容が謎に包まれる「39号室」とされ、核や弾道ミサイル開発に充てられる数百万ドルをねん出しているとの報道もある。