イラクで油田奪取のイスラム過激派、密売で1日2億円稼ぐ
ハティーブ氏は、トルコ当局はIS管理の密輸ルートを黙認していると指摘。同国南部の闇市場の閉鎖を欧米諸国に迫られない限り、現状は続くとも見ている。
イラクの主要な原油産出地帯はイスラム教シーア派が多数派の南部にあり、ISが支配するのは不可能ともみている。
それだけに、ISによるイラク北部の油田占拠が国際経済にもたらす悪影響は短中期的に見て最少程度と分析している。原油の密売網は現在、地域の仲介業者やタンク車の持ち主など通じた小規模にとどまり、投資が必要なパイプライン設置などイラク軍の目を引く手段には踏み切っていない。
しかし、ハティーブ氏は同組織がキルクークなど北部の他の油田を奪取した場合、密売収益が膨らみテロ実行能力がさらに拡大すると警告。
イラクの国家分裂も懸念される事態に追い込まれ、同国に対する投資が萎むなど経済的な悪影響が生まれると指摘した。イラク政府は2020年に原油生産量を日量約900万バレルに引き上げる政策目標を立てている。現在の水準の3倍相当で世界全体の需要量の1割に相当する量だが、ISのさらなる勢力伸長が生じれば目標達成も望めない状況となる。
イスラム国は今年7月、シリアからイラクにまたがる「カリフ制イスラム国」の樹立を宣言、反欧米の武装闘争の継続を打ち出した。アラビア半島の支配にも言及した。仮にこの目標が実現した場合、世界の石油とガスの生産量の約4割を握る事態となる。