なぜ「広島」を忘れてはならないのか 岸田外相が寄稿
とはいえ核兵器の廃絶を目指すなら、何よりもまずそれらの武器に依存する状況に歯止めをかけなくてはならない。つまり核兵器の削減には、安全保障戦略と軍事ドクトリンにおけるそれらの役割と重要性を低減する取り組みが伴う必要があるということだ。
残念ながら現在、総合的な国防戦略の一環として軍事力における核兵器の比重を高めようとするような動きが一部の国で見受けられる。明らかに誤った方向へと導く取り組みだ。
先般、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が正式なコンセンサスに到達できなかったことには非常に落胆した。それでも同会議の合意案の中には、世界の核兵器に関する完全な説明責任および透明性の必要性など、広範な支持を得た要素が多く含まれていた。これらの内容が失われることがあってはならない。
配備および備蓄された核兵器の正確な状況が把握できなければ、核軍縮の課題に適切に対処することは不可能だ。また透明性の向上は、一般の人々の間で問題に進展が見られるとの確信が高まることにも寄与するだろう。それゆえ、私はすべての核保有国からの信頼できるデータを求める。
変化を起こすには一般の人々からの支援が欠かせない。この点を念頭に置き、私は世界中の政治指導者と若者に対し、広島と長崎を訪れて核兵器がもたらす壊滅的で非人道的な結果を直接見てほしいと思う。そうした訪問自体が、核軍縮に向けた強力な原動力になると信じるからだ。
軍縮の問題は武器の不拡散という課題と密接に結びついている。私は、北朝鮮に対し、国際社会からの再三の要求に従い、すべての核兵器および現存する核計画を放棄するとのコミットメントを果たすべく具体的な措置を取ることを強く求める。