ボツワナでゾウ狩猟解禁、国際社会が非難も実害に悩む現地住民
ボツワナ・カサネ(CNN) アフリカ南部のボツワナが5月22日からゾウの狩猟解禁に踏み切ったことに対し、世界中で非難が巻き起こっている。一方、ボツワナ政府は、解禁の理由として、人とゾウの衝突増加などの被害を挙げる。
サファリ目的の観光地として人気がある同国だが、ボイコット運動が持ち上がるなど、貴重な収入源である観光業に影響が出る恐れもある。
ボツワナに生息する野生のゾウはおよそ13万頭と、アフリカ大陸で最も多い。保護団体などは同国を、最後に残された真のゾウの楽園と位置付けてきた。
5年前にゾウの狩猟禁止を実現させた当時の大統領イアン・カーマ氏は狩猟解禁について、愚かであり効果もないと批判。CNNの取材に対し、「殺処分は支持してはならない流血政策だ。人と動物の衝突を解決する効果はない。これは政治的行動だ」との見方を示す。
モクウィツィ・マシシ大統領率いるボツワナ政府は、解禁の理由として、人とゾウの衝突増加を挙げる。
政府の統計によれば、2009~18年の間に36人がゾウに遭遇して命を落とし、生計が破壊されたことに対する補償は昨年1年間で約200万ドル(約2億1000万円)に増えた。
カーマ氏はこの数字について、「ゾウに殺された人の数と、飲酒運転事故によって殺された人の数を比較してほしい」と訴える。
同国の農村部では、作物を荒らしたりフェンスを壊したりするゾウは地元住民に嫌われる。観光ツアーの玄関口となっているカサネの郊外では、先週、地元住民1人がガソリンスタンド近くでゾウと遭遇して死亡した。
近隣の村の住人は、「昔は私たちも猟を行っていた。駆除するためには全てのゾウを撃つ必要がある」と振り返る。この住人は、友人の農場を守ろうとして銃を撃ち、ゾウに踏まれたことがあるという。
マシシ政権が指摘しているのはそうしたゾウの実害だ。海外からの批判について、環境・野生生物・観光相は言う。「彼らはここに住んでおらず、我々のような経験もしていない。いつも自分の家や自分の環境で快適に過ごしながら批判することを良しとする。私たちがどんな問題を抱えているのか分かっていない」
狩猟ゾーンを設けることで、人の住む集落とゾウの間に緩衝地帯ができると同氏は述べ、ゾウを1頭撃てば、ほかのゾウは近付かなくなると説明した。