パキスタン、全国に1016の特別法廷設置へ 女性への暴力に対処
(CNN) パキスタンのアシフ・サイード・コーサ最高裁判所長官は23日までに、同国内で社会問題となっている女性への暴力に対処するため国内の全ての地区にこの問題を集中的に扱う計1016の特別法廷を設置する計画を発表した。
ロイター通信によると、この新たな法廷は既存の裁判所内に開設され、被害者が恐怖心を抱えることなく安心して証言出来る環境の中で家庭内暴力問題などを専門的に処理するという。
同国では近年、女性や少女に対する深刻な暴力の発生が目立ち、活動家や政治家らは対応策を要求してもいた。これら暴力にはレイプ、女性が結婚問題などで家族に恥をもたらしたとの理由で親族に殺害されるいわゆる「名誉殺人」、強酸を用いた攻撃、家庭内暴力や強制結婚などが含まれる。
独立系団体「パキスタン人権委員会」によると、昨年起きた女性に対する性暴力は少なくとも845件。ただ、隠蔽(いんぺい)された事例が多いとの指摘もある。
国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチは今年5月、性的暴力に警官が絡む事例もあり、被害を訴える当事者への嫌がらせや脅迫もあると警告していた。
同国の女性の権利協会の責任者はCNNの取材に、女性に配慮した適切な司法制度が欠けているため女性が司法の手段に訴えるのは極めて困難な状況にあると指摘。1016の特別法廷が設置されれば女性には大きな援軍になるなどと評価した。
パキスタンでは2016年、名誉殺人の問題で被害者の家族が許したとしても実行犯を罰することが可能な法案が成立していた。