新型コロナ、季節が変われば終息? 専門家からは懐疑的な見方も
米ニューヨーク州のシラキュース大学に籍を置く公衆衛生の専門家、ブリタニー・クムシュ氏は、「インフルエンザやヒトに感染する他のコロナウイルスには季節性の影響を受ける傾向があり、北半球では冬の数カ月間に感染のピークを迎える。しかし、今回の新型コロナウイルスが同じような季節性のパターンに従うのかどうかはわからない」との見方を示した。同氏はメリーランド大学の研究に関与していない。
クムシュ氏らはまた、地理的なデータからあまりに多くの結論を導き出すことにも警戒感を示す。ウイルスそれ自体やここ数カ月の感染拡大について、未知の部分が多いというのがその理由だ。
クムシュ氏によれば、温暖な地域での感染例が、渡航に関連した既知の患者とのつながりがあるものなのか、それとも感染源不明のケースなのかが問題だという。ウイルスに季節性があるのなら、どちらの場合でも気温の上昇に伴って感染の減少が見込めるが、現時点で新型コロナウイルスに季節性のパターンが存在するかどうかを判断するのは全く時期尚早だとクムシュ氏は考えている。
米ニュージャージー州ラトガース大学で医学を専攻するデブラ・チュー准教授も、ウイルスとその性質への理解が不足した現状では、季節性のパターンなどによってその動向を予測するのはほとんど不可能だと指摘する。
そのうえで疫病を抑え込む原動力としては、(ウイルスの季節性の有無よりも)伝染に影響を及ぼす軽症または無症状の人からの感染力の要素や、感染範囲を縮小させるための具体的な行動が重要になってくるのではないかとの認識を示した。「我々が相手にしているのは、インフルエンザのような毎年動向を予測できる種類のウイルスではない」(チュー氏)
今週は多くの国々が新型コロナウイルスの感染者の大幅な増加に見舞われた。他方、これまで感染拡大の被害が極めて深刻だった中国と韓国では状況が安定しつつあるように見え、週を追うごとに新規の感染者数が減少する傾向にある。保健当局が長期的な対策を打ち、感染地域の封鎖や人の移動の制限、自宅勤務の推奨、徹底した公衆衛生教育の支援などに取り組んだことが奏功したとみられる。
とはいえ、今後の展開は依然として予断を許さない。感染拡大の最前線だった地域で規制が緩和され始めた時、感染者数が再び増加に転じるのか、あるいは文字通りにウイルスを抑え込んだ状況になっているのかはわからない。世界の他の地域がいまだ対策強化に乗り出したばかりという中にあって、多くの人が望むのは気候の温暖化による事態の改善だろう。しかし、仮にそれが実現したとしても、ウイルスとの戦いがそこで終わるとは限らない。
「本当にこのウイルスについては、まだわからないことだらけだ」「たとえ感染者数が夏の間に減少しても、寒い時期にはまた増えると思って準備しておくのが賢明だ」(クムシュ氏)