環境を守ろうとして殺害された人、2020年は227人と過去最多に
(CNN) 森林や水辺などの自然環境を守ろうとして殺害された人が、昨年は世界で過去最多の227人に上ったという報告書が13日までに発表された。
報告書は環境・人権団体のグローバル・ウィットネスがまとめたもので、2020年に環境保護活動を理由に襲撃され、殺害された人に関する情報を収集して分析した。その結果、平均すると1週間に4人以上が、環境保護活動のために命を落としていることが分かった。
犠牲者の大部分は中南米に集中していた。特に最悪だったのはコロンビアで、先住民の土地を守るため、または森林とコカ畑を守るために65人が殺害された。次いで死者が多かったメキシコでは、森林破壊に関連した襲撃が3分の1を占め、30人が死亡した。
中南米以外で唯一死者が15人を超えたのはフィリピンで、鉱山開発や伐採、ダム建設を阻止しようとして29人が殺害された。合計すると20年の襲撃のうち半数以上が、この3カ国で起きていた。
犠牲者の遺族はグローバル・ウィットネスの調査の中で、新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウン(都市封鎖)のために、環境保護活動家が自宅で襲撃されやすくなったと証言している。そうした人たちは、自分たちの地域社会を支える自然資源を守るため、政府や企業に抵抗したという理由で標的にされた。
「20年は世界がじっと立ち止まる年になるはずだった。だがそれは、地球のために立ち上がった人たちにとっての安全が高まる結果にはつながらなかった」。報告書の筆者の1人、クリス・マデン氏はCNNにそう語った。「環境危機を加速させている無責任な搾取や貪欲(どんよく)さが、人々に対する暴力も増大させている」
グローバル・ウィットネスによると、襲撃の70%以上は、森林をさらなる伐採や開発から守ろうとした活動家らが標的とされていた。残る犠牲者は河川や海洋など水辺の生態系を守ろうとして殺害された。
産業別にみると、最も多かったのは森林伐採に関連した殺人で、ブラジル、ニカラグア、ペルー、フィリピンで合わせて23件に上った。次いで取水権をめぐる争いや、ダム建設、鉱山開発に反対した人の殺害が多数を占めた。
先住民については、世界の人口に占める割合は5%にとどまるにもかかわらず、20年に死者を出した襲撃事件の30%以上は先住民が標的にされた。グローバル・ウィットネスは、メキシコや中南米、フィリピンで起きた事件を紹介している。
アフリカの環境保護活動家も同様の被害に遭っているが、報告されない事件も多いと思われる。グローバル・ウィットネスが20年にアフリカ大陸で確認した事件は18件で、前年の7件から急増した。国別にみるとコンゴ民主共和国が大半を占め、残りは南アフリカとウガンダだった。
報告書によると、殺害された活動家は10人のうち1人以上が女性だった。「殺人以外にも、保護活動家や地域社会を黙らせる目的で、殺人の脅迫や監視、性暴力、刑法による禁止といった手口が用いられている。この種の攻撃に関する報告はさらに少ない」と報告書は伝えている。