ウクライナでコロナ感染の急拡大懸念、治療用酸素も不足 WHO
(CNN) 世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者であるマイク・ライアン博士は5日までに、侵攻したロシア軍との交戦が続くウクライナ情勢に触れ、新型コロナウイルスの感染拡大がより容易になる状況にあるとの危機感を示した。
記者会見で「ウクライナのように社会が混乱し、数百万人規模の移動が発生すれば感染症はそこにつけ込む」と指摘。「人々が密集した環境に遭遇し、ストレスを募らせ、食事にも欠き、適切な睡眠も取っていないのなら感染が非常に起きやすい」と危惧した。
米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、ウクライナは先月4日、1日あたりの新規感染者が過去最多の4万5000人を超えてもいた。予定回数のワクチン接種を終えた国民は34%にとどまっていた。
ライアン博士は、WHOは政治に巻き込まれたくないとしながらも、全ての当事者、特にロシア政府に対しウクライナで起きている苦難を考慮して自らの立場の再考を促した。
一方、WHOのテドロス・アダノム事務局長は、ウクライナで新型コロナやほかの疾病の患者が必要とする治療用の酸素が不足し、供給が必要と訴えた。
国内では少なくとも3つの酸素製造工場が閉鎖に追い込まれたとし、隣国で手当てしウクライナの必要な場所へ安全に運ぶ方途を模索していると述べた。補給物資の安全輸送を確保するための回廊の設置が早急に求められるとも強調した。
ライアン博士によると、先月最終週の時点でウクライナで高流量の酸素吸入の処置が施されていた新型コロナの患者は推定で2000人。これ以降、ほかの病気の患者を含めこの人数は増えている可能性があるとした。
同事務局長は、ウクライナで病院や医療従事者が重火器などの攻撃を受け、死傷者も出ているとの情報入手に深い懸念を表明。医療施設への攻撃は国際人道法の違反行為であるとも主張した。