ウクライナ周辺国に相次ぐドローン侵入、戦争飛び火の懸念に判断迫られるNATO
(CNN) 1機のドローン(無人機)が先週、ウクライナ西部の国境を560キロ以上も越えて、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のクロアチアに墜落した。クロアチア当局者によると、このドローンは爆弾を搭載していた。ウクライナ軍のものだったのか、ロシア軍のものだったのかは分かっていない。
ウクライナ南部のルーマニアでは、別のドローンが領空に侵入。15日にはウクライナ軍が、ポーランド領空を経由してウクライナに再侵入したロシアのドローンを撃墜したと発表した。
この3機のドローンは、ロシアがウクライナで行っている戦争がNATO加盟国にまで飛び火しかねないとの懸念を増大させた。たとえ意図的ではなかったとしても、加盟国で事態が起きた場合にどう対応すべきかの判断をNATOは迫られている。
NATO加盟国へのドローン侵入について米国防当局者は、ほとんど偶発的だったようだとの見方を示した。ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって以来、米軍は誤算リスクを低減し、意図しない軍事衝突を防ぐため、ロシアとの間に衝突回避ホットラインを確立している。米軍はこの回線を「1日に1~2回」テストしているが、これまでのところ、必要とするには至っていないと国防当局者は説明した。
一方、NATOが衝突回避ホットライン経由や書簡経由で試みているロシアとの接触はうまくいかず、ロシアの意図をめぐって懸念が強まっている。NATO本部で記者会見した当局者は16日、「もちろん接触は試みている」「だがそのためには双方のコミュニケーションが必要だ」と語った。
ロシアが先の週末に精密誘導ミサイルで攻撃したウクライナ西部リビウの軍事演習場は、ポーランドとの国境から16キロほどしか離れていなかった。その前日にロシア当局者は、欧米からウクライナに兵器を輸送する車両は攻撃対象になると警告していた。
米軍は衝突がエスカレートする事態を避けるため、監視ツールやセンサーを配備して、ロシアやベラルーシから発射されるミサイルのレーダー放射や赤外線信号を検知できるようにしている。米当局者によれば、この情報を分析することで針路を予測して追跡を続けることができ、発射が意図的だったのか、偶発的だったのかも判断できるという。
米国とNATOはウクライナ国内でのドローン偵察飛行は中止したが、米軍は国境付近で偵察ドローンや偵察機U―2を飛行させ、上空の衛星も利用している。NATOも定期的にウクライナ付近で早期警戒管制機(AWACS)を飛行させている。ポーランドには、飛翔(ひしょう)体がNATO領空に侵入した場合に備え、地対空誘導弾「パトリオット」が配備されている。
戦略国際問題研究所のトム・カラコ氏は、「あまりにたくさんのドローンが飛び交っているので、誰もが不安な思いで事態を見守っている」「ロシアがここでやっていることの大きさを考えれば、そうした事態が起きてもおかしくない」と指摘した。