大麻1キロの密輸で死刑執行、本人は無実訴え 人権団体が批判 シンガポール
これに対して国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、「タンガラジュ死刑囚の有罪判決は主に、弁護士も通訳も立ち会わずに行われた警察の尋問による供述と、共謀者とされた2人の証言に基づいている。このうち1人は無罪となった」と反論した。
家族はタンガラジュ死刑囚について、「投獄されても無罪を求めて戦いたい意向だった」「きっと公正な裁判が行われると信じ、自分の無実を証明したいと思っていた」と話す。
現地の支援団体は、タンガラジュ死刑囚は主に状況証拠と推測に基づいて有罪を言い渡されたと訴え、「密輸をはかったとされる大麻に彼が触れたことはなかった。CNBに逮捕された男性2人の携帯電話から発見された2つの電話番号によって、犯行に関与したとされた」と指摘している。
アジアでは昨年、長年のキャンペーンを受けてタイが初めて大麻を合法化した。シンガポールの隣国マレーシアは今月、重大な犯罪の刑罰を死刑のみと定めていた法制度の改革案を通過させ、麻薬犯罪など死刑のみを刑罰とする罪状の数を減らした。
一方、シンガポール政府は改革を求める声に対して抵抗を続け、昨年だけでも11人の死刑を執行した。全て麻薬取引関連の犯罪だった。
シンガポールの法律では、一定量の覚醒剤、ヘロイン、コカイン、大麻製品といった禁止薬物の取引や密輸の罪に問われた者に対して死刑を義務付けると定めている。
内務省はタンガラジュ死刑囚の死刑執行に対する国際的な批判に対し、「シンガポールは薬物を一切容認しない姿勢を取り、多方面からのアプローチで薬物対策に取り組んでいる」との声明を発表。「死刑はシンガポールの刑事司法制度に欠かせない要素であり、シンガポールの安全と安心を守る効果がある」と強調した。