中国艦隊、日本を周回するように航行 G7サミット控え地域の緊張高まる
東京(CNN) 強力な駆逐艦に先導された中国海軍の艦隊がこのほど、12日間をかけて日本を周回するように航行したことが分かった。台湾問題を巡る緊張や日本で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)の準備が進む情勢を受け、中国が軍事力を誇示した形だ。
防衛省は11日、駆逐艦2隻とフリゲート艦1隻、補給艦1隻からなる艦隊を示した地図を公開した。
日本地図と共に示されたこれらの艦隊は、先月30日に対馬海峡から日本海に入り、北東へ進むと、今月5日から6日にかけて宗谷海峡を通過。その後、11日には伊豆諸島の周辺を航行したという。
防衛省の発表の後、中国共産党機関紙「環球時報」はこの艦隊の航行と台湾に関する「日本の最近の挑発的な発言」とを結びつける記事を掲載した。中国共産党は台湾を自国の領土と主張しているが、歴史上一度もこれを統治したことはない。
同紙は中国の専門家の発言を引用し、「今回の航行は中国海軍の通常の遠洋練習航海である公算が大きく、いかなる国際法にも違反しない。またいかなる第三者を標的としたものでもない。それでも日本に対する強力なメッセージと見なすことは可能だ」と報じた。
岸田文雄首相は10日、Nikkei Asiaとのインタビューで、台湾海峡の平和と安定が日本のみならず国際社会全体にとっても極めて重要だとの認識を示していた。
また林芳正外相も同日、中国の駐日大使の発言を巡り日本政府として中国政府に抗議するメッセージを発した。同大使は、日本が台湾問題を自国の安全保障と結び付ければ「火の中へ引きずり込まれる」と発言していた。
日本を周回するような中国艦隊の航行は、19日に開幕を控えるG7サミットに先駆けたものでもあった。
中国艦隊が同様の航行を実施したことは過去にもあったが、メディアの報道と結びついた今回のタイミングと航路は懸念を呼び起こすと専門家らは指摘する。
シンガポールにあるS・ラジャラトナム国際問題研究大学院の上級フェロー、ジョン・ブラッドフォード氏は、中国メディアの報道に大きな問題があると分析。中国海軍の行動と台湾を巡る岸田首相の発言とを関連づけることで、威嚇の効果を得ようとしているとの認識を示した。
そうした種類の威嚇行動は地域の緊張を高めると、ブラッドフォード氏は付け加えた。
またテンプル大学で政治学を専攻するジェームズ・ブラウン教授は、岸田首相が広島でのG7サミットでロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「今日のウクライナは明日の東アジア」というメッセージを改めて打ち出す公算が大きいとみている。ここでの東アジアへの言及は、中国による台湾進攻の展望を意味する。
「中国は武力の誇示を通じ、日本が米国をはじめとする西側諸国と安全保障上の協力関係を深めるのを抑止したい考えだが、現状では逆の結果を招く可能性が高い」(ブラウン氏)