命がけの出産や子育て、麻酔なしの帝王切開も 苦境深まるガザの女性たち
食料不足のために、28万3000人の5歳未満の子どもや授乳中の女性の健康が脅かされているとケアの担当者は訴える。
ガザには1日33ミリリットルの水しか使えないという同僚もいるとハジハッサン医師は話し、水が減り続けて母親が授乳できなくなっていると危機感を募らせる。
ガザ市の自宅から南部のハンユニスへ避難した妊娠9カ月のアマルさん(仮名)は「もし帝王切開が必要になったらどうしよう。どうやって出産するの? 病院には発電機がない。残る電力も途切れたら? それ以上に危険なのは、麻酔がないこと。病院に医療はなく、衛生もない」と不安を訴えた。
子どもが生まれた後のことも心配しなければならない。限られた量の水を飲める状態にするためには、たき木か古いガスを使って沸かす必要がある。
「バケツ1杯の水が手に入れば運がいい。(母親は)赤ちゃんに大人の牛乳を沸かして飲ませている。またはビスケットをくだいて水を加えてかきまぜ、食事にしている」(アマルさん)
ハジハッサン医師によると、狭い場所に大勢の人が避難していることから、下痢や肺炎などの呼吸器感染症が流行しているという。
エマン・バシルさん(32)は、自分の子どもも含めて知っている子どもたちはほとんどが下痢や嘔吐(おうと)などの症状に苦しんでいると語った。3人の子どもをもつバシルさんも、イスラエル軍の避難命令を受けて北部からハンユニスへ避難した。
ほとんどの病院が機能していないため、学校で出産した女性たちもいると聞いたとバシルさんは話す。
「女性は生理用品や生理用タオル、鎮静剤を必要としている。女性はひどい苦痛を感じ、マットレスもない床の上で寝ている。ほとんどの薬局は営業を停止した。ピルも足りない。私たちは、女性が布切れを使うような(古い時代に)戻り始めている。こんな状況の中でも女性の生理は避けられない」(バシルさん)
複数の支援団体関係者によれば、避難した女性たちは清潔で安全なトイレがなく、水道も使えず、プライバシーもないキャンプで暮らすことが多く、B型肝炎や毒素性ショック症候群などの感染症が拡大する恐れもある。
エジプトの支援団体は、ガザの民間人のために生理用品や下着、おむつなどの支援物資40万点以上を送ったという。物資がラファ検問所に到達したことは確認したが、ガザにいつ入れるのかは分かっていない。
「私たちは炎の下に、死の下に、民族浄化の下に、不公正の下にいる。今起きていることをその目で見ながら黙っている世界の不公正の下に」。シファ病院に避難しているムスレさんは訴えた。