米ファイアフライの「ブルーゴースト」、月面着陸に成功 民間2社目
(CNN) 米宇宙企業のファイアフライ・エアロスペース(本社テキサス州)が開発した無人月面着陸船「ブルーゴースト」が米国時間の2日、月面に着陸した。月面着陸を成功させた民間企業はこれで2社目となった。
高さ2メートルのブルーゴーストは米中部標準時の2日午前2時34分ごろ、月の表側に着陸した。
民間が開発した着陸船は今年に入って次々に月へ向けて打ち上げられている。米航空宇宙局(NASA)は民間と手を組んで、人類を再び月に送り込む計画に備えたい意向。
しかし成功が保証されていたわけではなかった。2023年には米インテュイティブ・マシーンズ(本社テキサス州)が民間企業として初の月面着陸を成功させているが、これまでの月面着陸の試みはおよそ半分が失敗に終わっている。
ファイアフライのジェイソン・キム最高経営責任者(CEO)は月面に着陸したブルーゴーストについて「安定した状態で直立している」と述べ、「着陸さえも、何もかも時刻通りだった」「足元には月の塵(ちり)が付着している」と伝えた。
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月面にブルーゴーストの影が見える。遠方には地球も/Firefly Aerospace
ブルーゴーストの4本の足には全てセンサーが内蔵されており、月面に着陸すると直ちに確認できる設計になっていた。しかしウェブ中継では、4本の足のうち3本しか接触を確認できなかった。
記者会見したファイアフライの担当者は、この原因についてはデータを検証するとした上で、ブルーゴーストが直立していることは明らかだと説明。着陸地点は目標の100メートル圏内だったとの見方を示した。
ブルーゴーストが着陸したのは、月の表側の極東にあって赤道の北側に面した太古の火山「ラトレイユ山」付近。ラトレイユ山は、全長およそ550キロの月面の盆地「マーレ・クリシウム(ラテン語で「危機の海」の意味)」に位置している。
着陸から約40分後、ブルーゴーストの撮影した初の画像が地球に送られてきた。画像には、月の塵やクレーター、搭載カメラがとらえた着陸船の一部が写っている。
NASAのジャネット・ペトロ長官代行はファイアフライに謝意を表し、関係者全員の熱意と献身をたたえた。
ブルーゴーストは今後14日間かけて月面の標本採取や掘削、X線画像や高精細画像の撮影を行う。地球が5時間にわたって太陽光を遮る日食の様子も月面から撮影する。
さらに、50年以上前に宇宙飛行士が目撃した現象を写真に収める計画もある。キム氏によると、月の地平線が輝いて見えるこの現象(浮遊する静電気を帯びた粒子によって光が散乱する現象)を目撃したのは、アポロ15号と17号の宇宙飛行士のみ。今回はこの現象を4Kの高精細映像で撮影して公開する予定だという。
ブルーゴーストは月が夜に入ってもデータの収集を続ける予定。着陸地点のラトレイユ山付近の気温は氷点下173度にまで下がることもある。
月面着陸船は一般的に、夜に入ると活動を停止する。しかしファイアフライはNASAとの契約の一環として、そうした過酷な寒さの中でもブルーゴーストの活動継続を目指す。