火星が「赤い理由」を覆す新たな理論、「さび」は30億年前に発生していた可能性

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欧州宇宙機関の探査機が2007年に捉えた火星の姿/ESA & MPS for OSIRIS Team/MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA, 2007

欧州宇宙機関の探査機が2007年に捉えた火星の姿/ESA & MPS for OSIRIS Team/MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA, 2007

(CNN) 火星はその象徴的なさび色から、長い間「赤い惑星」と呼ばれてきた。科学者たちは今回、その独特の色の根源となっているものを発見し、一般的な理論を覆した可能性がある。

火星は、地球に近く、過去数十年にわたり多数の探査機が訪れたこともあり、太陽系で特に研究が進んでいる惑星の一つだ。人工衛星や着陸機から得られたデータは、火星の赤色は、この惑星を覆う塵(ちり)の中にあるさびた鉄鉱物に由来していることを示していた。

ある時点で、火星の岩石内の鉄が水または大気中の水や酸素と反応して酸化鉄を作り出した。これは、地球でさびが形成されるのとほぼ同じ仕組みだ。数十億年の間に、酸化鉄は塵に分解され、火星の風によって運ばれ惑星全体に堆積(たいせき)した。

研究者らはこれまで、水があったという証拠が得られていなかったことから、火星の酸化鉄をヘマタイトだと信じてきた。鉄鉱石の主成分であり、水分を含まないヘマタイトが、数十億年にわたる過程で火星の大気と反応して形成されたと考えられていたのだ。もしそうだとすれば、ヘマタイトは火星の歴史の後期、つまり表層に湖や川があったと考えられる時期よりも後に形成されたことになる。

複数のミッションのデータと、再現された火星の塵を組み合わせた今回の研究では、赤い色味の要因はヘマタイトではなく、冷水の存在下で形成される鉱物である可能性が示唆されている。この発見は、数百万年前の火星がどのようなものだったのか、そして火星が居住可能だったかについての科学者の理解を変える可能性がある。この研究結果は25日、ネイチャー・コミュニケーションズ誌で発表された。

塵を精査する

火星の塵に含まれる酸化鉄の正確な組成がどのように形成されたかを理解できれば、過去の古代の火星の環境と気候がどのようなものであったかを振り返ることができる。

新しい分析は、酸化鉄を水酸化鉄だと指摘している。これは冷水で急速に形成される。つまり、火星が寒冷化し、生物が生息しづらくなる以前、表層にまだ水が存在していたときに形成された可能性が高い。これまでの研究でも、火星の赤色の要因が水酸化鉄である可能性は示唆されていたが、今回の研究は、実験室方式と観測データを初めて組み合わせて証拠を提示している。

研究の筆頭著者で米ブラウン大学地球・環境・惑星科学部の博士研究員であるアドマス・バランティナス氏とチームは、欧州宇宙機関の火星探査機マーズ・エクスプレスやエクソマーズ・トレース・ガス・オービター、米航空宇宙局(NASA)のマーズ・リコネッサンス・オービターなどによって収集されたデータを利用した。

トレース・ガス・オービターに搭載されたカメラ「CaSSIS」によって、火星の塵粒子の正確な大きさと組成が明らかになったことで、研究者らは地球上でこれを再現することに成功。

科学者らは、さまざまな種類の酸化鉄を用いて、実験室で独自の火星の塵を作成した。再現された塵は特殊な粉砕機にかけられ、火星の塵と同じ大きさに砕かれた。その厚さは人間の髪の毛の100分の1程度だという。

科学者らは、さまざまな種類の酸化鉄を用いて、実験室で火星の塵を再現した/A. Valantinas
科学者らは、さまざまな種類の酸化鉄を用いて、実験室で火星の塵を再現した/A. Valantinas

研究チームは、火星を周回する探査機が火星を研究する際に使用する技術に似たX線装置と反射分光計で塵を分析。その後、研究室のデータと探査機のデータを比較した。

反射分光計は、火星の最も塵の多い部分でさえ、水を豊富に含んだ鉱物の証拠があることを示した。一方、CaSSISのデータは、実験室のサンプルと比較して、火星の塵に最もよく一致する物質はヘマタイトではなく水酸化鉄であることを示していたという。

バランティナス氏はこの発見が主に意味するところについて「水酸化鉄は表層に水がまだ存在していたときにのみ形成されたため、火星はこれまで考えられていたよりも早くさびたということだ。さらに、水酸化鉄は火星の現在の条件下でも安定している」と説明する。

火星は水の存在する灰色の惑星から、乾燥した赤い惑星に変貌を遂げた/ESA
火星は水の存在する灰色の惑星から、乾燥した赤い惑星に変貌を遂げた/ESA

水に覆われた過去

火星の赤色の謎は何千年も続いてきた。

バランティナス氏は、火星の色合いが、ヘマタイトのような水分のない鉱物ではなく、水酸化鉄による可能性があることを発見したことは、研究者たちを驚かせたと語る。

「この水分を含むさびが火星の表面の大半を覆っていることから、太古の火星には液体の水がこれまで考えられていたよりも広範囲にわたって存在していた可能性があることを示唆している」とバランティナス氏は指摘し、研究は、火星がかつて液体の水が存在する環境であったことを示唆しており、火星での水酸化鉄の形成には酸素のほか、鉄と反応できる水の両方が必要だったことを明らかにしたと説明する。

この研究は、水酸化鉄が具体的にいつ形成されたかを特定することには焦点を当てていない。しかし水酸化鉄は、冷水の中で形成されるため、火星がより暖かく湿潤だった数百万年前ではなく、約30億年前に作られた可能性がある。

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