新発見の小惑星、7年後に地球に衝突したらどうなる? 世界と宇宙で観測続く
(CNN) 2032年に2.8%~3.1%の確率で地球に衝突する可能性がある小惑星「2024 YR4」が見つかった。ごくわずかな可能性とはいえ、専門家は軌道などの解明を進めており、間もなく史上最強の性能を誇る宇宙望遠鏡を使った観測を開始する。
2024 YR4について詳しいことは分かっていない。米航空宇宙局(NASA)の専門家によると、直径は40~90メートルと推定され、大きなビルほどの大きさだという。
これは、6600万年前に恐竜を絶滅させた「惑星キラー」と呼ばれる小惑星の直径およそ10キロに比べるとはるかに小さい。地球に衝突した大型の小惑星は、分かっている限りではこれが最後だった。全長1キロ以上の惑星キラー小惑星は、生命に壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。
しかし小さな小惑星でも、もし地球に衝突すれば、地域的に壊滅的な被害をもたらし得る。そのため2024 YR4についてできるだけ詳しく知ることが急務となっている。
2024 YR4の軌道などに関してもっとデータを取得できれば地球に衝突する可能性はゼロになるかもしれない。しかし、4月に地球から見えなくなるまでに残された観測の時間は限られる。現在は、大きさや軌道を見極めるため、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を2024 YR4の方向に向ける計画が進んでいる。
潜在的に危険な天体の追跡
2024 YR4は昨年12月27日、南米チリにある小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)の望遠鏡で発見され、複数の望遠鏡を使って何度も観測が行われている。小惑星は表面に反射される太陽光の量でしか調べることができず、大きさは表面に反射される光の量を使って推定される。
しかし3月上旬から2024 YR4の観測を始める予定のウェッブ望遠鏡は、赤外線で宇宙を観測できる。12月に科学誌ネイチャーに発表された論文によると、同望遠鏡を使えば小惑星が反射する熱を測定して、はるかに高い精度で大きさを推定できる。
2024 YR4は1月上旬以来、米ニューメキシコ州のマグダレナリッジ天文台やデンマーク望遠鏡、チリの超大型望遠鏡で観測が続けられてきた。地球からの現在の距離はおよそ4800万キロ。4月上旬までは見ることができ、その後は姿を消して太陽を周回する軌道を進み続ける。
観測はハワイでも続けられている。マウイ島のハレアカラ火山には、世界をリードする地球近傍天体発見望遠鏡がある。
欧州宇宙機関(ESA)によると、2024 YR4が地球から見えなくなっても、ウェッブ望遠鏡を使って観測を継続できる。3月に予定されている1回目の観測に続き、5月に2回目の観測を行う予定。このデータを使って軌道の最終的な測定を行うとともに、太陽から遠ざかるにつれて温度がどう変化するかを調べる。
もし地球に衝突する可能性を排除できないまま2024 YR4が見えなくなれば、2028年6月に再び姿を現すまで、危険な小惑星のリストに残り続ける。現時点の推定では4年ごとに地球に接近する軌道上にあるものの、ハワイ大学によれば28年に地球に衝突する恐れはない。
リスク推定
2024 YR4の正確な大きさが分かれば、将来的に地球に衝突した場合のリスクを推定する手がかりとなる。
「もし想定されるサイズの上限だった場合、衝突地点から最大50キロの範囲で爆発の被害が出る可能性がある」とNASAのポール・チョーダス氏は言う。「ただしその可能性は極めて低い。被害が発生し得るのは、この小惑星が大気圏に突入する際のとてつもないスピードによる(秒速およそ17キロ)」
この大きさの小惑星は数千年ごとに地球に衝突しており、地域的に大きな被害が発生しているとESAは指摘する。
惑星協会によると、1908年には直径30メートルの小惑星がロシアのシベリア辺境の森林の中の川に落下。森林の破壊は2150平方キロメートルの範囲に及び、2000万本の樹木に被害が出た。
2013年、ロシアのチェリャビンスク上空で大気圏に突入した直径20メートルの小惑星は、空中で破裂して最初の原子爆弾の20~30倍のエネルギーを放出し、太陽以上の光と熱を発散。7000棟を超す建物が損壊し、1000人以上が負傷した。
ESAによれば、もしも2024 YR4が想定サイズの上限だった場合、これを大幅に上回る被害が出ることもあり得る。
「2024 YR4が50メートル級で、岩石でできた小惑星だった場合、1908年の衝突と同程度の影響が出るだろう」「これは直径25キロの円の面積に相当する。もっと大きければ、影響は数十キロに及ぶだろう」(ESA)
新しく発見される地球近傍天体は年間およそ3000個に上る。しかし2024 YR4ほどの大きさの小惑星は、暗くて小さく、望遠鏡で見えにくいことから発見が難しい。同程度の大きさの小惑星はおよそ60万個あると推定されているが、ESAによると、これまでに発見されたのはわずか2%程度の1万2000個にとどまる。
ハワイ大学のラリー・デノー氏は声明の中で、「大型の小惑星の方が被害ははるかに大きいが、地球に衝突する頻度はずっと少ない。我々が発見していない大型の小惑星はまだたくさんある。だからこそ我々は、潜在的脅威を見越して空全体の監視を続けている」と指摘している。