38億年前にできた月の「グランドキャニオン」、10分以内に形成の可能性
(CNN) 新たな研究によると、約38億年前、月にはわずか10分足らずで二つの巨大な峡谷が形成された可能性がある。
この形成物はそれぞれが米アリゾナ州にあるグランドキャニオンに匹敵するほどの大きさで、米航空宇宙局(NASA)の月探査ミッション「アルテミス3号」が2026年後半に人類を着陸させることを目指している月の南極付近に隠れている。
月の峡谷はどちらも、より大規模なシュレディンガー衝突盆地の一部だ。盆地は数十億年前にいまも特定されていない物体が月に衝突したことで形成された。4日にネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載された新たな研究によると、この巨大な衝突が二つの峡谷の形成にもつながった可能性が高い。
研究著者らは、峡谷が形成される際に放出されたエネルギーは、かつて第2パナマ運河を掘削するために計画されていた核爆発エネルギーの1200~2200倍の強さだったと推定している。
今後のミッションでこの盆地を訪れて岩石の試料を採取できれば、科学者が月のあいまいな起源と歴史の理解を深めるのに役立つ可能性がある。また、月を研究することで、小惑星やその他の岩石の破片が惑星や衛星に衝突したときの初期の太陽系の状態も明らかになるかもしれない。
![月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」が捉えた画像。クレーターから伸びる深い渓谷が見える/Ernie T. Wright/SVS/NASA](/storage/2025/02/08/3eea5c4e88d17ec8f2bc99189b9ced3b/02-lunar-canoyons-image-one.jpg)
月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」が捉えた画像。クレーターから伸びる深い渓谷が見える/Ernie T. Wright/SVS/NASA
古代の衝突をつなぎ合わせる
峡谷や渓谷は衝突時に発生した岩石破片の筋によって形成され、シュレディンガー衝突盆地から放射状に広がっている。
月の地質学者の間では、今回の新しい研究が扱った、シュレディンガー峡谷とプランク峡谷と呼ばれる二つの峡谷が特に大きいことは以前から知られていたが、最新の論文を執筆した研究チームは、2009年から月を周回しているNASAの月探査機が撮影した写真と標高データを使用して、この巨大な地質学的特性の画像を分析。このデータにより、盆地とその周辺を含む地域の地図が作成された。
測定の結果、これら二つの峡谷の幅と全長がグランドキャニオンに似ていることが明らかになった。シュレディンガー峡谷の全長は270キロで深さは2.7キロ、プランク峡谷は全長280キロ、深さ3.5キロに及ぶ。