英政府、3740億円規模の「カーボンネガティブ」発電所を承認 議論の的に

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ヨークシャーにある英電力会社ドラックスの発電所/Edward Crawford/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

ヨークシャーにある英電力会社ドラックスの発電所/Edward Crawford/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

(CNN) 英政府は16日、木を燃料とする「カーボンネガティブ(炭素吸収量が排出量を上回る状態)」発電所の建設に20億ポンド(約3740億円)を投じる計画を承認した。ただ、一部の気候専門家からは、環境に優しくない可能性のある技術に多額の資金を投じる実験だとの批判も出ている。

英国のクチーニョ・エネルギー安全保障相は、イングランド北部ヨークシャーの発電所にある発電機2基に炭素回収装置を取り付ける計画にゴーサインを出した。運営は英電力会社ドラックスが担う。同社によると、稼働が始まれば、発電機1基当たり年400万トンの炭素汚染物質の大気流入を防げるという。

こうした炭素はその後、北海の海底に貯留される。地球温暖化の促進を防ぐのが目的だ。

ヨークシャーの発電所はかつて西欧で最も排出量が多かったが、ドラックスは2019年、燃料を石炭から木質ペレットを中心とするバイオマスに切り替えた。主に北米から輸入された木材を燃料に使用し、英国の発電量の約4%を生産している。

バイオマスは既に「カーボンニュートラル(炭素排出量実質ゼロ)」を達成しているとみなされる。木の燃焼時に炭素汚染物質が放出されるが、燃やした木に代わる新しい木が成長し、光合成を通じて炭素を吸収することで排出量が相殺されるためだ。

さらに炭素回収装置を追加することで、発電所はバイオエネルギーと炭素回収・貯留を組み合わせた「BECCS」と呼ばれるエネルギーに転換する。ドラックスはこれにより、バイオマス燃焼で生成される以上の炭素を大気から取り除くことでき、カーボンネガティブが達成できるとしている。

ただ、一部の気候専門家からは、この技術に強い批判の声が上がっている。

エネルギーシンクタンク、エンバーのアナリスト、トモス・ハリソン氏は「BECCSは有効性が証明されていない議論の多い技術であり、英国民に多大な金銭コストを負わせる結果になる」と指摘する。

バイオマスの燃焼が本当に環境にやさしいのか、疑問を投げかける科学者もいる。欧州科学アカデミー諮問委員会による2021年の研究では、エネルギー目的で木を燃やしても「気候変動を緩和する効果はなく、危険な気候変動のリスクを高める可能性すらある」との結論が下された。

批判の主なポイントは、バイオマス燃焼で放出された炭素が樹木の成長で吸収されるのには数十年かかるという点だ。また、木材の調達で森を破壊する可能性を懸念する声も上がっている。

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