地球温暖化の限界迫る 2023年の世界気温、史上最高を更新
(CNN) 欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービスは9日、2023年の世界の平均気温が産業革命前に比べて1.48度上昇し、観測史上最高を記録したと発表した。
23年の世界平均気温は14.98度となり、これまでの最高だった16年の記録を0.17度上回った。世界の海洋温度も記録を更新した。
23年は世界各地で相次ぎ記録的な猛暑が観測され、気温上昇を1.5度に抑えるという15年のパリ協定の限界に近付きつつあるとして、専門家が警鐘を鳴らしていた。
コペルニクス気候変動サービスによると、地球温暖化は今年に入ってさらに悪化した可能性があり、1月または2月までの12カ月間では1.5度を突破する可能性が大きいと予想している。
専門家がそれ以上に懸念しているのは、1.5度以上の温暖化が長期的に続く状況だ。そうなれば地球上の多くの生態系にとって順応が難しくなり、人間が生存できる限界に近付く場所もある。
コペルニクス気候変動サービスによれば、23年の前例のない猛暑は主に気候変動が原因だが、太平洋の海面水温を上昇させる自然現象のエルニーニョによって加速された。
23年は全日の世界平均気温が、産業革命前の1850~1900年の同じ日の気温を1度以上上回った。観測史上初めての現象だった。
世界の気温は1970年代から着実に上昇を続け、2015年には初めて1度を突破する温暖化を記録した。さらに0.5度上昇するまでわずか8年しかかからなかった。
気温が高かった過去30年に比べても23年は突出しており、平均気温は1991~2020年の平均を0.6度上回った。
世界の平均気温は、オーストラリアを除く全大陸と海盆で史上最高またはほぼ最高を記録した。そうした気温の上昇は、ほぼ全世界を覆っていた。
記録的な熱波の影響で、カナダ、ハワイ、欧州南部など各地で大規模な山火事が発生。「パリ協定の上限に近付いた激動の気候を我々に見せつけた」と英インペリアル・カレッジ・ロンドンのブライアン・ホプキンズ氏は述べ、「世界中の大半の政府の行動にみられる自己満足を揺るがすだろう」と指摘する。
23年は世界の海洋も異常な温暖化が続いた。海面温度は1991~2020年の平均より0.44度上昇。上昇幅は観測史上最高を記録し、史上2番目だった2016年の0.26度上昇を大幅に上回った。
海洋の異常な温暖化は、長期的には化石燃料による大気汚染が主な原因だが、昨年7月に始まったエルニーニョも影響している。海面温度が上昇すれば、ハリケーンや台風、熱帯サイクロンの勢力が強まる。
昨年12月にはアラブ首長国連邦ドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)に約200カ国が出席し、化石燃料からの脱却に向けて貢献することで初めて合意した。この合意は広く歓迎される一方で、化石燃料の主要生産国がほとんど行動を起こさずに済む抜け穴があるとの批判も出ている。
「もし我々が気候リスク管理を成功させたいと望むなら、経済の脱炭素化を急ぐと同時に、気候データや知識を活用して未来に備える必要がある」とコペルニクス気候変動サービスのカルロ・ブオンテンポ氏は指摘している。