巨額銀行詐欺で不動産業の女性被告に死刑判決、国内の汚職危機浮き彫りに ベトナム
(CNN) ベトナムの裁判所は11日、125億ドル(約1兆9000億円)規模の銀行詐欺訴訟に関して、不動産開発会社の元会長の被告に対し、死刑判決を言い渡した。同国では強力な反汚職のキャンペーンに絡んで、厳しい処罰が相次いで下されている。
アナリストらによると、チュオン・ミー・ラン被告が犯した不正の規模は、長年権威主義の下で安定したイメージを打ち出してきたベトナムの大衆社会に動揺を引き起こしている。経済成長の主要な牽引(けんいん)役を担ってきた外国人投資家の間でも、不安が広がっているという。
ラン被告の裁判は先月始まり、国営メディアで一般向けに報じられた。これは通常情報統制が厳しいベトナムにあって方針の転換を意味する。60代後半のラン被告は、収賄、銀行規制に対する違反、横領の罪で有罪となり、死刑判決を受けた。ただ被告の家族は被告が上訴すると示唆している。
捜査員によれば、ラン被告と共犯者らは民営のサイゴン商業銀行(SCB)から125億ドル超に相当する資金を横領した。被告は数十人の代理人を通じて実質的に同行をコントロールしていたが、規制では金融機関に対する株の大量保有が厳しく制限されている。ロイター通信が報じた。
国営メディアのVNエクスプレス・インターナショナルによれば、 ラン被告の行動の結果、SCBは270億ドル相当の損害を被った。
ラン被告が横領した金額は、ベトナムの経済規模のおよそ3%に上る。一方、マレーシアで2009年から長年行われてきた政府系ファンド「1MDB」にまつわる巨額の汚職事件では、約45億ドルが盗まれたとされる。これはそれまでの金融犯罪で最大規模の被害額とみられている。
ロイター通信によると、国営メディアは今回のベトナムでの汚職で84人の被告が判決を言い渡されたと報じた。量刑は執行猶予付き3年の有期刑から終身刑まで様々。このうちラン被告の夫は禁錮9年、姪(めい)は禁錮17年の判決を受けた。
ベトナムの実権を握るベトナム共産党は、過去1年間で驚くべき水準の横領及び詐欺を暴いている。これは16年から続く現行の反汚職キャンペーンの一環で、これまで党員数百人が捜査対象となっている。