米中国防トップが会談 対面での会談は1年6カ月ぶり
シンガポール(CNN) オースティン米国防長官と中国の董軍国防相は31日、異例の対面会談を行った。米中国防トップの会談が対面で行われるのは2022年11月以来、約1年6カ月ぶり。両国はアジア太平洋全域で高まる安全保障の緊張や、台湾に対する中国の威嚇から米国の同地域での同盟強化まで両国間のさまざまな摩擦に対処する狙い。
シンガポールで毎年開催されるアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)の合間に行われたこの会談は、緊迫した地域情勢を背景としている。世界最大の海軍を擁する中国は、東シナ海と南シナ海の係争海域における領有権を主張し続ける一方、日本、韓国、フィリピンなど主要同盟国との安全保障関係の強化に向けた米国の取り組みを非難している。
中国は今月初め、台湾で民主的に選出された新総統の就任を受け、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。中国共産党は台湾を自国の領土の一部と主張している。
中国の沿岸警備隊はここ数週間、南シナ海の係争海域で活動するフィリピン船に対抗するため放水銃を発射し、同地域ですでに高まっている米国の条約同盟国との緊張をさらに高めている。
中国は、米国とその同盟国間の動きを挑発的と見なし、反発している。中国国防省の報道官は30日、フィリピンで先月行われた軍事演習中に米国のミサイルシステムが配備されたことを非難した。
米当局者は会談に先立ち、オースティン氏が董氏に対し、中国のロシア支援について懸念を表明するとみられると述べた。米国はここ数週間、中国からの軍民両用製品の輸出がウクライナで戦争を仕掛けているロシアの防衛産業基盤を強化していると指摘しており、米当局者は中国に対し、大きな被害を与える可能性のある装備をロシアに提供しないよう警告している。
オースティン氏と董氏の会談では、両国が抱える多くの根深い問題の解決に向けた実質的な進展は見込まれていない。
一方で国際社会はこの会談を、誤解や軍事的ミスが紛争に転じることを回避するための対話の強化に向けた前向きな一歩とみている。