中国海警局の「モンスター」巡視船、フィリピンのEEZ内に停泊
(CNN) 中国海警局の船「CCG5901」が3日、フィリピンのパラワン島から北西に約130キロ離れたスプラトリー(南沙)諸島サビナ礁近くに停泊したことが分かった。フィリピン沿岸警備隊のタリエラ報道官が明らかにした。この場所はフィリピンのおよそ370キロに及ぶ排他的経済水域(EEZ)内に大きく入り込んだ位置にある。
排水量1万2000トン、全長541フィート(約165メートル)のCCG5901は、米国沿岸警備隊の主力巡視船バーソルフ級カッターの3倍の大きさで、「モンスター」と呼ばれている。
タリエラ氏によると、CCG5901は、以前サビナ礁周辺に配備されたフィリピン沿岸警備隊の最新かつ最大の巡視船BRPテレサ・マグバヌアの1隻から約730メートル以内に停泊した。
CCG5901の大きさはBRPテレサ・マグバヌアの5倍以上に及ぶ。
ロイター通信の報道によると、タリエラ氏は6日、フォーラムで「この行為は中国海警局による威嚇だ」と非難。フィリピンは南シナ海の領有権の主張を撤回することはないと述べた。
中国外務省は8日、定例記者会見でフィリピンの主張について質問されると、問題の海域がフィリピンのEEZの一部であることを否定。巡視船は中国の国内法と国際法を順守して活動していると反論した。
セカンド・トーマス礁付近で6月に起きた衝突では、中国海警局の要員が斧(おの)などの刃物やとがった道具をフィリピン兵に振り回し、ゴムボートを切りつけた。この衝突でフィリピン兵1人が親指を失った。
スタンフォード大学国家安全保障イノベーションのゴーディアン・ノット・センターのレイ・パウエル氏によると、CCG5901はこの事案には関与していないものの、それ以来フィリピンのEEZ周辺を巡回している。
パウエル氏と他のアナリストは、世界のどの通常の沿岸警備隊の船よりも大型で、米海軍の駆逐艦の大きさをも上回るCCG5901の主な任務の一つは威嚇だと話す。
ほとんどの国の沿岸警備隊は通常、法執行や捜索救助活動を任務とし、軍事作戦への参加は想定されていない。
しかし中国海警局は、中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察に所属している。
パウエル氏はCCG5901を「従来の沿岸警備隊の任務を遂行することは意図されておらず、主に中国の準軍事的海上部隊の中心的要素として用いられている」と話す。
米インド太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター氏は、CCG5901の規模と乗組員は、同巡視船を大規模作戦の中央指揮艦として機能させるのに十分だと述べた。
同氏によると、中国海軍の空母もここ数週間、フィリピン近海で活動を続けている。この二つの動きはフィリピンに圧倒的な中国海軍力を見せつけるための取り組みだという。