教化・忠実・訓練、ウクライナと戦う北朝鮮兵を過小評価すべきでない理由
忠誠心が何よりも重要
第11軍団の兵員は北朝鮮で比較的特権的な立場にいる可能性が高い。
この部隊は高く評価されており、金総書記の護衛を担当する部隊にも劣らない地位にある。この軍団への入隊には政権への忠誠が鍵となる。
マッデン氏によると、入隊者は2親等まで家族歴を調べられ、両親がどのような人物で、どこに住んでいるかを調査される。
特定の訓練や演習で良い成績を収めれば、第11軍団に採用または再配属されるかもしれないが、同軍団は主に身体の鋭敏さと能力を備え、一定の経歴を持つ兵士で構成されているという。
特殊部隊は敵地に入り込み、任務を遂行し、情報収集を行い、直接攻撃を仕掛けるよう訓練されている。
先の全氏は「これらの北朝鮮部隊の主な任務は破壊工作だ」と述べた。
マッデン氏によると、第11軍団の一部には1万人規模の特殊部隊があり、パラシュートなどで敵地に潜入し、暗殺やインフラ攻撃、破壊工作を行う訓練を受けている。また、一部の特殊部隊は捕虜になるよりは自殺するよう教えられているという。
全氏は、軍務中に遭遇した北朝鮮兵の大半は死を選ぶとの見方を示す。
自殺すれば、北朝鮮で家族が面倒を見てもらえるうえ、本人は永遠に英雄と見なされるからだ。
近年、金総書記は巨大な軍隊の効率化に努めてきた。
全氏は「金氏は兵士を選び、特定の兵器を交代で使用させている。つまり、できる限り熟練度を維持しようとしている」と話す。「金氏は100%機能する軍隊を持つことはできないが、献身的な軍隊を持っている。20万人の兵士でもほとんどの欧州諸国より大規模だ」
ロシアに派遣された北朝鮮兵に選択の余地があったのか、兵士やその家族にインセンティブが与えられたのかは不明だ。
しかし、現金収入と海外に行く機会は多くの人にとって魅力的かもしれない。
ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、ロシアは「北朝鮮兵に関連する派遣費用すべてと兵士への俸給を支払っている可能性が高い」。
韓国の情報機関は、ロシアにいる北朝鮮兵が月2000ドル(約30万円)の給与を受け取っている可能性があると示唆している。
ロシアや中国との国境に近い監視所で休む北朝鮮兵=2023年9月/Ng Han Guan/AP/File
全氏は平均的な北朝鮮兵の給与は月1ドルだと指摘。金総書記が少なくとも90%を受け取るとみられるが、兵士が300ドルほどを受け取るとすれば、それは大金だと話す。
ウクライナ側は10月、北朝鮮兵が降伏すれば「1日3食の温かい食事」と医療、手厚い待遇を約束するとした韓国語の動画を投稿した。
しかしアナリストらは大量脱走について、あり得ないという。
「外国にいる北朝鮮兵について知っておくべきことの一つは、彼らが常にペアになっているということだ。ウクライナに逃亡しようとする北朝鮮兵は仲間に頭を撃たれるか、その逆になるだろう」(マッデン氏)
全氏は「兵士が戦争でどのように行動するかは決して分からない」としつつ、北朝鮮兵がどれだけの実績を示すかはロシアの戦争をはるかに超えた影響をもたらすとの見方を示す。
「北朝鮮人が任務に失敗した場合、つまり彼らが経験の浅い兵士の集団である場合、それは朝鮮半島の安全保障にはるかに大きな影響を与える。一方で、もし彼らが優秀で、学習し、失敗を通じてでもすでに学習しているのであれば、それは依然として朝鮮半島にとって、そして世界にとって悪いニュースとなるだろう」(全氏)