471日間も拘束していた人質に渡した手土産には、ハマスが自らを揺るぎない統治機関と位置付ける狙いがあった。
イスラエルとガザ市民、そして世界に向けて発信したメッセージは明らかだった。「我々は今も正当な統治機関であり続け、厳粛かつ合法的な手続きにのっとっている」――。たとえ相手が力ずくで自宅から連れ去ったイスラエルの民間人だったとしても。
ガザ市内の交差点にカッサム旅団の戦闘員が集結し、赤十字の車両を先導する場面もあった。政府がハマスを殲滅(せんめつ)させると宣言したイスラエルの国民に対する見せつけだった。
ガザ市内に数十人の戦闘員が集まったとしても、深刻な軍事的脅威が実証されたとは到底言い難い。
それでもこの光景は、停戦を屈辱と受け止めるイスラエルの極右勢力と、15カ月に及んだ容赦ない戦争でもハマスを壊滅させられなかった以上、これ以上の流血は愚行だと論じる対話支持派の両方をあおり立てるだろう。
赤十字の車両を先導する戦闘員/Abed Hajjar/AP
イスラエルのギドン・サール外相は19日、ハマスの軍隊と政府を解体させるという目標は達成していないと認めたうえで、「我々は前進した」と語った。
米国の国務長官だったアントニー・ブリンケン氏は、イスラエルの目標は到底達成されていないとの見方を示し、「ハマスは失ったのとほぼ同数の戦闘員を採用している。それが持続的な反乱と恒久的な戦争のやり方だ」と指摘した。