ISIS急襲現場にいたもう1匹の犬、「ボビー」に会う
(CNN) シリアで先週末実施された過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」指導者バグダディ容疑者の殺害作戦で、同容疑者を追い詰めた米軍の軍用犬が注目を受けた。だが、この作戦で運命が永遠に変わった犬はこれだけではなかった。
シリア人写真ジャーナリスト、ファレド・アルホルさんは作戦の翌朝、北西部イドリブ郊外にあるがれきと化したバグダディ容疑者の潜伏先を撮影していた。すると、鳴き声のような音が聞こえた気がした。振り返ると、砂まみれの子犬が母親の死骸の傍らで悲しそうな声を上げていた。
子犬が母親の死骸の傍らで悲しそうな声を上げていた/Courtesy Fared Alhor
今回の作戦で親を亡くし「孤児」となったこの犬は、餓死する危険性があった。アルホルさんは思わず子犬と一緒に遊んで、元気づけようとした。アルホルさんは生来の動物好きであり、何か手を打たないといけないことが分かっていた。子犬を残して立ち去るのは胸が痛んだ。
「孤児」となったこの子犬は餓死する危険性があった/Courtesy Fared Alhor
誰か犬の世話をしてくれる人はいないかと周囲に尋ねたが、あなたが持ち帰りたいのではと切り返された。アルホルさんはその場では犬を運ぶ手段がなく、いったん自宅に物を取りに帰った。キャリーケースと餌を抱えて現場に戻ると、天気は冷たい雨模様に。「犬をケースにいれて連れて帰った」(アルホルさん)
ただ、帰りの道のりは簡単ではなかった。車を持たないアルホルさんはケースをバイクに載せ、大雨のなか危険地帯を20マイル(約32キロ)走行した。それでも救いたい命だった。
アルホルさんは子犬を「ボビー」と名付けた。最初は友人宅にボビーを預けようとした。その家では最近たくさんの子犬が生まれたばかりだったが、結局アルホルさんはボビーと別れがたく、家に連れ帰ってきた。
アルホルさんは友人宅にボビーを連れて行ったが、結局別れがたく持ち帰ってきた/Courtesy Fared Alhor
「彼と遊んだり、甘やかしたり、えさをあげたり。市場に行ってえさも買ってきた」とアルホルさん。先月30日には地元動物病院に連れていき、検査と予防接種を受けさせた。この病院は「アレッポの猫男」の異名で知られる男性が運営している。
獣医師の検査を受けたボビー/Courtesy Fared Alhor
アルホルさんは自分ひとりの生活も苦しい状況だが、ボビーの世話をすると心に決めた。大したお金は持っておらず、えさ代や犬小屋の調達などの費用をまかなえるか心配で、何らかの支援が得られたらとも語った。