最高指導者殺害もISISは死なず、再起を準備か
(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が死亡した。シリアからイラクにまたがる地域を支配下に置き、異教徒の虐殺、捕虜に対する拷問と処刑、古代遺跡の破壊といった行為で世界に衝撃を与えた組織を率いてきた人物は、もうこの世にいない。
米国が有志連合やイラク軍、クルド人主体の部隊「シリア民主軍(SDF)」の力を借りて、ISIS掃討作戦を実施し、バクダディ容疑者を殺害した。
しかし、これでISISの脅威が終わったわけではまったくない。西アフリカ、リビア、エジプトのシナイ半島、アフガニスタン、フィリピンでISISは活動を続けており、欧州その他の地域に支持者を抱えている。米国防総省の8月の報告によれば、シリアとイラクの間では依然として最大1万8000人のISIS戦闘員が逃亡中だとみられている。
ISISが持つ関連組織や同調者らとの広範なネットワークが、バグダディ容疑者の死とともに消えてなくなったと結論できる理由はどこにもない。同容疑者は確かにISISにおける権力の頂点に君臨していたが、今後は別の人物が頭角を現し、その地位に収まろうとするはずだ。新たなリーダーはおそらく、前任者の死を教訓にしつつ組織を率いていくだろう。
そもそもバグダディ容疑者は、人を引き付けるカリスマ性に乏しかった。イスラム教の預言者ムハンマドの子孫を自称していたが、国際テロ組織アルカイダの指導者だったオサマ・ビンラディン容疑者のように長年にわたって世界的に知られるような存在ではなかった。
CNNは今春、シリア東部の戦闘地域で多くのISIS戦闘員並びにその家族にインタビューしたが、その中でバグダディ容疑者の名前が上がることはほぼ皆無だった。ISISの理念に今なお忠実な人々でさえ、自分たちの忠誠はISISに対するものでありその指導者へのものではないと明言していた。