トランプ氏政策、米観光業に打撃か 専門家が旅行客急減予想
ニューヨーク(CNNMoney) トランプ米大統領が一部渡航者の入国禁止令などを出した影響で、米国への旅行者が急減し、観光業界が深刻な打撃を受ける恐れがあると、専門家らが懸念を示している。
観光業界の動向や展望を調べる米ツーリズム・エコノミクス社によると、米国を訪れる旅行者は今年から来年にかけ、1060万人減少すると予想される。これはマイナス7%に相当する。
米経済の損失は180億ドル(約1兆9700億円)に上り、約10万7000人が職を失うとみられる。
損失の半分以上はカナダ、メキシコ両国からの旅行者減少に起因するとみられるが、西欧諸国からの観光客も減る傾向にあるという。
当然ながら、問題は渡航制限の対象国にとどまらない。ツーリズム・エコノミクスのアダム・サックス社長は「入国禁止令の対象は渡航者全体の0.1%以下だ」と指摘。そのうえで、こうした政策の影響で旅行先としての米国のブランドが傷付いているとの見方を示し、「旅行者の計画や好みはちょっとしたことで変わってしまう」と懸念する。
ドル高傾向などの要因も観光業界を圧迫してはいるが、同社ではトランプ政権の政策がなければ、今年の旅行者は増加を見込んでいたはずだという。
ビジネス客への影響も予想される。業界団体の調査では、企業の出張担当者の半数近くが米国での会合や会議を減らすと答えた。参加メンバーの一部が入国できないなどのトラブルも考えられるからだ。
実務上の問題以外に、トランプ政権への抗議として旅行をとりやめている人もいるとの観測もある。
米国では同時多発テロの後、観光業界が立ち直るまでに約10年かかったとされる。いったん傷付いた名誉は、なかなか挽回(ばんかい)できないかもしれない。