米中貿易摩擦 聖書も「犠牲者」か、実は多くが中国で印刷
ニューヨーク(CNN Business) 米国と中国との間で進められている貿易をめぐる交渉で、両国政府が合意に達しない場合、聖書も高関税の「犠牲者」となるかもしれない。
トランプ米大統領は米中による交渉が失敗に終わった場合、中国からの輸入品全てに関税をかけるとの考えを明らかにしている。出版社からは、こうした関税が聖書の印刷費用を押し上げ、在庫不足を引き起こす可能性もあるとの警告が出ている。
米出版社の大部分が中国で聖書を印刷している。聖書には約80万の単語が使われており、複雑で費用がかかるためだ。聖書出版の大手ハーパーコリンズ・クリスチャン・パブリッシングの試算によれば、聖書の出版経費の約4分の3が中国で発生している。
同社の最高経営責任者(CEO)はトランプ政権幹部に宛てた書簡の中で、現在提案されている関税が消費者や宗教団体、教育団体にとって「聖書税」を課すことにつながると訴えた。25%の関税によって自社の事業や消費者が深刻で不相応な被害を受ける可能性があるという。
ハーパーコリンズは聖書や祈とう書などを課税の対象から外すよう求めている。
今回の件は、米中間の貿易摩擦が意図しない結果を引き起こすことの新たな証左といえそうだ。貿易摩擦は、すでに米国の農業従事者にとって負担となっているほか、米企業の経費を押し上げ、世界経済の減速にもつながっている。
問題の根幹は聖書の印刷には金がかかるということだ。聖書には通常の書籍の10倍の単語が使われているため、印刷には非常に薄い紙が必要となる。そして、そうした薄い紙への印刷には特別な機器を使用しなければならない。
ハーパーコリンズ・クリスチャン・パブリッシングによれば、そうした印刷に必要な機器などを直ちに用意することは米国内であろうと他の場所であろうと難しい。また、関税が、国内の印刷業者にとって、こうした分野への投資を再開する誘因になる可能性は少ないという。