退任するCEOの半数、辞任ではなく解任
(CNN) 最高経営責任者(CEO)の退任を発表するとき、企業は幾らでもあいまいな理由を並べ立てるかもしれない。だが、CEOの「解任」を発表したり、正確な理由を説明したりすることはまれだ。
ある研究によると、ラッセル3000指数に入る企業が過去2年間で発表したCEO退任のうち、52%は引導を渡された可能性が高い。この中には、辞任だったと説明する人や離任の潮時と感じただけだと語る人、突如として家族と過ごす時間を増やしたい衝動に駆られたという人も含まれる。
「別の言い方をすれば、CEOの半数以上は強いプレッシャーにさらされて辞めたということだ」。経営陣の離任を追跡調査するサービス「エクスチェンジ」の創業者、ダニエル・シャウバー氏はそう語る。
エクスチェンジは、退任するCEOに0~10の「更迭」スコアを割り当てた。「0」は退任がほぼ確実に自発的であった場合を示し、「10」は公然と解任されたことを示唆する。スコアが「5」より大きければ更迭の可能性を考えるべき理由があることを示している。
スコア算出に当たっては退任に至るスピード、年齢や在職期間、企業の株価、公式発表の文言など様々な要素を考慮した。
たとえば、50代前半のCEOが短い在職期間で説明なしに会社を離れ、株価は低迷、後任選びは不透明、取締役会からの称賛も熱意に欠けるという場合は高スコアがつく可能性が大きい。
秘密主義の理由は?
取締役会がオブラートに包んだ声明を出すのは、会社とその名声を守り、訴訟の可能性や非難を避けるためだろう。
CEOや取締役会に助言を行う「ボズウェル・グループ」の幹部、ケリー・サルコウィッツ氏は「取締役会がCEOを解任する場合、自分たちの失敗を直視する必要が出てくる。雇ったのは取締役会なのだから、失敗の責任は必ず自分たちにもある」と指摘する。
取締役会にはまた、退任するCEOの評判を傷つけたくないとの思惑も働く。多くのケースでは互いの非難を控えるという合意が存在し、あしざまに言えば後任に良い候補が集まりにくくなるためだ。
CEOの側で不当解任だと感じたとしても、懸かっているものが余りに大きいため、通常は公に不満を口にすることはない。
解任されても全ての終わりではない
重大な犯罪や企業倫理にもとる行為に及んでいない限り、解任されたCEOでも、正しく対応すれば経営トップとしてのキャリアを終える必要はない。
CEOや取締役会への助言を行うghSMART社のエレナ・リトキナ・ボテロ氏は「早くに窮地を脱した人は、自分の視点から経緯を説明できる」と指摘する。
こうした元経営者なら冷静に「事実関係はこうだった。自分が望んだようには運ばなかった。そして、私の対応策はこうだった」と語ることができるという。
これとは対照的に、解任されたCEOの中には、非難をかわすのに忙しく、互いの合意に基づく辞任だったとの話を作り上げることに汲々(きゅうきゅう)とする人もいる。
一方で、いつまでも打ちひしがれていたり、恥の意識でいっぱいになっていたりする人の場合、新しいポストを手に入れようとしてもうまくいかないだろう。
あるCEOは多額の負債を抱えた企業から解任されたが、在任期間中は債券市場が悪化していたうえ、経営再建が強みなわけでもなかった。それなのにこの男性は恥ずかしい思いで一杯で、本来適任だったはずの新たなCEO職の面接ではこれが伝わってしまった。「雰囲気も口調も敗北主義者のそれで、うまくやれなかった」という。