米高級レストラン、料理を自宅で 新型コロナで持ち帰りや宅配に業態転換
(CNN) 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、米国の高級ダイニングの風景は大きく変わった。すでに多くのレストランが閉店し、営業を続ける店も料理を提供し続けるための別の方法を模索している。
最近はミシュランガイドの星付きレストランが相次いでテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(配達)の分野に進出するなど、高級料理店も様変わりしている。
新しいビジネスモデルの構築
米国で最初に新型コロナウイルスの深刻な被害を受けた都市のひとつであるシアトルにある老舗高級レストラン「キャンリス」は今、ミールキットに注力している。
キャンリスは日替わりのメニューを提供している/Courtesy Canlis
「ファミリーミール」と呼ばれるこのキットは2~4人分で、4種類の料理で構成されている。メニューは毎日変わり、予約サイトで注文可能だ。
また家庭でも店の雰囲気を味わえるように、毎夕、同レストランの「売り」のひとつであるピアノ演奏のライブ配信を行っている。
受賞歴のあるレストラン「アリニア」や「ネクスト」「ロイスター」、カクテルバー「ジ・エイビアリー」などを傘下に持つシカゴのアリニア・グループも、コロナ禍で米国内のレストランの予約が激減しているのを見て、テイクアウトサービスを始めた。
アリニア・グループはメニューをしぼって提供している/Grant Achatz/The Alinea Group
現在、同グループのレストランは、それぞれ1種類の料理のみを提供しており、その料理は頻繁に変わる。共同所有者のニック・ココナス氏は「1つのことに丁寧に取り組むことは非常に大切なことのひとつだ」と語る。
一方、これまでのやり方を完全に捨てる必要はないと考える料理人もいる。
シカゴのサウスループにあるミシュラン二つ星レストラン「アカディア」のオーナー兼シェフ、ライアン・マッカスキー氏は、アカディアのテイスティングメニューをデリバリー用に変更するのではなく、アカディアや、メーン州で同氏が経営する季節限定レストラン「アカディア・ハウス・プロビジョンズ」のメニューから選りすぐった持ち帰り用の一品料理を提供している。
新しいソウルフード
シェフは心を込めて料理をするとよく言われるが、ボウル(深皿)や箱に入った料理だからといってシェフが自分の味を表現できないわけではない。
メキシコ料理と中華料理の味わいを組み合わせた「コントレアー」/Fabian von Hauske Valtierra/Contrair
マンハッタンにあるテイスティングメニュー専門レストラン「コントラ」とワインバー「ワイルドエアー」の共同オーナー、ファビアン・フォン・ハウスケ氏は、2つの店の情熱と料理を1つのボウルの上で組み合わせた「コントレアー」を発売した。
1枚のボウルに盛り付けられるこの料理は、フォン・ハウスケ氏が作るメキシコ料理と、もう1人の共同オーナー、ジェレミア・ストーン氏が作る中華料理の要素が融合している。
シェフとして高い評価を得ているドミニク・クレン氏は、いくつかのレストランを経営しているが、いずれも小規模な店であり、(現在のコロナ禍でも)より多くの人の利益になることをする、という自身の考えを実現するためには、1カ所に自分のエネルギーを集中させる必要があった。
そこでクレン氏が考案したのが「クレンキット」だ。がんを患った経験があるクレン氏は、栄養を最も重視しており、食べ物は「魂に良いもの、免疫系に良いもの」であるべきと考えている。クレンキットの料理にもカリフォルニア州ソノマにある、クレン氏のバイオダイナミック農法を取り入れた農場で栽培された野菜を使用することが多い。
低ストレスかつ十分な栄養を取ることによる心理的なプラス効果もクレン氏にとって重要だ。クレン氏は、在宅勤務と子どもの教育や家に引きこもっているかもしれない高齢者の世話とを両立している親たちのさらなる労働の負担をこのクレンキットで軽減できればと考えている。
高級志向の客向けサービス
テイクアウトのトレンドは、手頃な価格の「家庭の味わい」が楽しめる食事に傾いているが、ニューヨーク市内にある客席数わずか14席の小さな懐石料理店「Odo」のシェフ、大堂浩樹氏は最近、新しい高級ケータリングサービスを発表した。
「Odo」では懐石料理を用意した/Courtesy ODO
閉店当初に発売した(現在も販売している)1つ18ドル(約2000円)のすし弁当とは対照的に、5品で構成された1人当たり250ドル(約2万7000円)の高級懐石料理を提供する。
大堂氏によれば、普段店で使用している、より高級な食材を使用して、家庭で高級な体験をしたいと考える客に高級懐石料理を提供したいと考えたという。