老舗レストラン「ザ・ロシアン・ティー・ルーム」、ウクライナ侵攻後に苦境 米NY
ニューヨーク市ローワーイーストサイドの雰囲気はまるで正反対だ。人々はウクライナ料理店ベセルカの前に行列を作って並んでいる。オーナーのジェーソン・バーチャードさんによれば、わずか1週間で客足は75%以上も増加。ロシア軍に包囲されるウクライナを支援する活動拠点にもなっているそうだ。
ベセルカ――ウクライナ語で「虹」――は、ウクライナの伝統料理であるビーツのスープ「ボルシチ」の売上金をウクライナに医療品や医療機器を送るNGO団体ラゾム・フォー・ウクライナに寄付している。バーチャードさんによれば、最初の1週間で1万ドルの募金が寄せられ、2週目にはさらに1万5000ドルが集まると見込まれている。
また店頭では、ばんそうこうやバッテリー、ヘッドランプ、浄水タブレット、衣料品の寄付なども受け付けている。「なんでもいいから寄付してください、後はこちらで何とかします」と店のウェブサイトには書かれている。
不買運動はニューヨーク市だけにとどまらず、オハイオ州、オレゴン州、ユタ州などでもロシア製ウォッカのボイコットが行われている。とはいえ、これらはアメリカに輸入されるウォッカのほんのわずかにすぎない(4日、ウォッカブランドのひとつストリチナヤの製造元はブランド名を「ストリ」に変更すると発表し、同社のオーナーはルクセンブルクの複合企業であり、製品はラトビアで製造されていると指摘した)。
ソーシャルメディアでトレンドになっている#BoycottLukoilというハッシュタグは、ロシアの大手石油会社ルクオイルが提携するガソリンスタンドで給油しないよう人々に呼びかけている。だがこのロシア第2の石油会社は「武装紛争の一刻も早い終結を求める」という声明を発表した。
ロンドン市場でのルクオイル社の株価は、侵攻の後およそ99%も暴落。同社の株取引は3日に一時停止された。
ベセルカのオーナーのバーチャードさんは、今回の危機では分断よりもむしろ団結を望んでいると語る。「この世の中はクレージーです。私もいま起きている出来事に心を乱され、怒りを覚えています」とバーチャードさん。「ですが、ロシアの人々には何の恨みもありません」