IMFの世界経済見通し、成長率を下方修正 ウクライナ侵攻の影響
ロンドン(CNN) 国際通貨基金(IMF)は19日に発表した世界経済見通しで、今後2年間の経済成長率の予測を下方修正した。ロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響が「地震」のように広がっているためとしている。
IMFは今年と来年の世界の成長率を、ともに昨年の6.1%より大幅に低い3.6%と予想。1月時点の見通しに比べ、今年の数値を0.8ポイント、来年については0.2ポイント引き下げた。
世界銀行も今週、世界の今年の成長率予測を3.2%に下方修正していた。
IMFの見通しは、今後も戦争がウクライナ国内にとどまり、対ロシア制裁がエネルギー部門に及ばず、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)による影響は弱まり続けるという想定に基づいている。
紛争は当然ながら、当事国に最も深刻な影響を及ぼす。IMFによると、今年の経済成長率はウクライナがマイナス35%、欧米から制裁を受けるロシアがマイナス8.5%に落ち込むと予想される。
同時に、燃料や農産物の価格高騰、サプライチェーン(供給網)問題の悪化、インフレ激化などの影響は世界全体に及んでいる。ロシアのウクライナ侵攻は今年2月、世界経済がパンデミックから回復しないうちに始まったため、回復は大幅に遅れる恐れがある。
ロシアのエネルギー資源に大きく依存する欧州の今年の成長率予測は2.8%と、1月の時点より1.1ポイント引き下げられた。
米国への影響は比較的小さいものの、貿易相手国の不振に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)が新型コロナで導入した緊急支援を打ち切って利上げに踏み切るとの方針が、成長の重しになるとみられる。米国の今年の成長率見通しは3.7%と、前回より0.3ポイント引き下げられた。
中国の今年の成長率は4.4%と予想され、同国政府が目指す5.5%を大きく下回る見通し。背景要因としては新型コロナの感染拡大を食い止めるためのロックダウン(都市封鎖)措置やウクライナ侵攻の影響、不動産業界の不況が挙げられる。
IMFは世界全体の経済見通しが年初以来、大きく悪化したと指摘する一方、成長率2.5%のラインを割り込むリセッション(景気後退)に陥るとは予想していない。ただし、見通しをめぐる不透明感は「通常の範囲を大きく超えている」とも指摘した。
米金融大手ゴールドマン・サックスは今週、米国がリセッション入りする確率は今後1年で15%、2年で35%との予測を発表した。野村グループは18日、中国がこの春リセッションに陥る確率は高まっているとの見方を示した。
今後の情勢は、ロシアのプーチン大統領の出方に大きく左右される。ドイツはロシア産天然ガスの供給が止まれば、今後2年で約30兆円の経済損失を被ると予想している。
フランスのルメール経済・財務相は19日、仏ラジオ局とのインタビューで、欧州連合(EU)レベルでロシア産石油の禁輸措置が検討され、マクロン大統領もそれを望んでいると述べる一方、一部の加盟国が難色を示していると説明した。