米国のパイロット不足が深刻化、地方便の運航取りやめ相次ぐ
ニューヨーク(CNN Business) 米ミシシッピ川近くのアイオワ州ダビュークの空港からの旅は、この地域の約10万人の住民にとって楽なものだった。空港は小さく、通り抜けも簡単、そして駐車場も無料だ。
それがこの9月ですべて終わることになった。
ダビュークに定期便を運航している唯一の航空会社であるアメリカン航空は、路線で使っている小型ジェット機に必要なパイロットが不足しているため、路線を廃止することにした。
同社はまた、ニューヨーク州ロングアイランド東部のイスリップ、コーネル大学がある同州北部イサカ、そしてオハイオ州トレドでも同じ理由で運航を取りやめる。
ダビューク空港を利用するほとんどの住民や企業にとって、代替策はシカゴのオヘア空港まで車で3時間かけて行くことだ。そして今回の決定は空の移動が難しくなるだけでなく、ダビュークとその周辺地域のビジネスチャンスにとって大打撃となる。
「航空便がビジネス界にとって重要であることは明らかだ」と、ダビューク地域商工会議所のモリー・グローブ最高経営責任者(CEO)は話す。「人材を引っ張ってきたりするのに飛行機に頼っている。車で移動する必要がないため、時間の節約にもなる」
しかし、影響を受けているのはダビューク空港などだけではない。専門家によると、さらに多くの都市にとっても問題となっていて、今後数年で懸念が増す可能性が高いという。小型ジェット機に依存するハブ・アンド・スポーク・ネットワークを採用する大手航空会社のユナイテッド航空とデルタ航空も、現在乗り入れている小規模空港の一部で減便を進めている。
航空会社がパイロットの増員を図っているにもかかわらず、米国のパイロット不足はさらに深刻化すると予想されている。特に、大手航空会社に代わって小規模都市に乗り入れている地域航空会社にとっては差し迫った問題だ。大型ジェット機の操縦で引き抜かれるのは、主にそうしたパイロットたちだからだ。
しかも、この問題は単に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による米航空業界の混乱と、その結果起こった早期退職者の殺到によるものではない。
地域航空会社協会のフェイ・マラーキー・ブラックCEOは「地域社会はこの10年、航空サービスを失ってきた」と語る。
同協会の統計によると、地方空港を抱える20の市場は、過去3年間で就航便数の半分を失った。しかも、今年後半に予定されている減便は含まれていない。さらに42の市場では、同期間に3分の1から2分の1の便がなくなった。
パイロット不足のため航空会社にはサービス削減以外の選択肢はないとマラーキー・ブラック氏は言う。「パイロットになる人の数は、辞める人の数より少ない。パイロットは素晴らしい仕事だが、問題は参入に大きな障壁があり、訓練費を払える裕福な人たちに限られていることだ」と述べた。
同氏は、より多くのパイロットをこの分野に引き入れるために、融資の機会やその他のリソースに変更が加えられるはずだと述べたが、他の専門家はこの傾向が覆るとは思わないと言う。
「小型ジェット機が存在するのには理由がある。それはなくならない。しかし、航空の経済性は変化している」とイスラエルの調査会社シミラーウェブのシニアインサイトマネジャー、ジム・コリドーア氏は話す。「燃料費、賃金の圧力があり、航空の経済性が変わりつつある。一部の都市では採算がとれなくなってきている」と指摘した。