公募増資撤回の印アダニ、トップ説明も安心材料とならず 株価下落
ニューデリー(CNN) インドの富豪ゴータム・アダニ氏(60)は2日、前日にアダニ・グループ旗艦企業の25億ドル(約3200億円)規模の公募増資を突如撤回した件について説明する動画を公表したが、投資家の安心材料とはならず、同社の株価は下落した。
アダニ氏は事前録画した動画で「私にとっては投資家の利益が最重要であり、あとは全て二の次だ」と説明。「市場が安定し次第、資本市場戦略を見直す」と表明した。
アダニ氏が株式市場の混乱について言及するのは初めて。
アダニ・グループの株価急落が始まったきっかけは、米国の空売り会社ヒンデンブルグ・リサーチが不正疑惑を指摘したことだ。ヒンデンブルグが報告書を発表して以降、上場企業7社を傘下に持つアダニ・グループの時価総額は計900億ドルあまり消失した。
外資銀行はアダニ・グループに厳しい目を向け始めている。ブルームバーグ通信によると、クレディ・スイスはアダニ傘下企業の社債をプライベートバンク部門の顧客のマージンローン(証券担保融資)の担保として受け入れるのを停止した。
混乱にもかかわらず、アダニ・グループの旗艦企業アダニ・エンタープライゼズは1月31日、25億ドル相当の新株発行にこぎつけた。上場企業の増資としてはインドで過去最高額とうたわれた。応募は最初こそ低調だったものの、その後募集額の全額に達した。
しかし翌日、アダニは増資を撤回した。株価は先週以降、公募価格を大幅に下回る水準で推移しており、申し込んだ投資家は即座に損失を被る状況だった。
アダニ氏は動画で「投資家を潜在的な損失から守るため、我々は撤回した」と述べ、「今回の決定により既存事業や将来の計画が影響を受けることはない。我々は引き続き、プロジェクトの迅速な実行と提供を重視していく」と表明した。
グループの財務基盤は「強固」であり、「債務返済の実績は全く問題ない」とも述べた。
ヒンデンブルグは1月24日に発表した調査で、アダニ・グループの「数十年に及ぶ大胆な株価操縦と不正会計」を指摘。グループ企業の高すぎる評価額についても疑問視していた。
アダニ・グループはすぐに「根拠を欠き」「悪意がある」報告書だと反論していたが、創業者のアダニ氏が危機に触れたのは今回の動画が初めてだった。
ただ、この動画で株式市場の動揺が収まることはなく、アダニ・エンタープライゼズの株価はムンバイ市場で9%近く下落。他のグループ企業の株価も5~10%落ち込んだ。