日銀、金融緩和維持も金利操作を柔軟化 米などで利上げ進む中
(CNN) 日本銀行は28日、物価上昇が進む中で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度とする金融緩和策を維持した。一方、何年も続く超低金利政策を徐々に転換する可能性も示唆し、円高、株安が進んだ。
日銀は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化を進めると発表。一部のアナリストは、2016年に導入された10年物国債利回りを0%程度に誘導する政策の転換につながる一歩と受け止めた。
UBSのアナリストは「政策金利のガイダンスが盛り込まれていないのは、近い将来、政策金利を引き上げる選択肢を残していることを示唆する」との見方を示した。
米国や欧州の中央銀行は今週、過去20年あまりで最も高い水準に政策金利を引き上げた。ただ、投資家は一連の引き締め策も終わりが近いと見ている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は26日、0.25%の利上げを決定し、政策金利は22年ぶりの高水準となった。昨年3月以降で11回目の利上げ。先月には地方銀行3行の破たん後の経済状況を評価するため、いったん利上げを見送っていた。
FRBの最新の予測によれば、今年中にあと1回の利上げを予定する。25、26日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の会合後の声明では、「インフレは高い状態のまま維持している」との認識を示し、FRBが「インフレリスクに十分な注意を向けている」と述べた。
28日の日銀の発表後、円はドルに対し最大1%上昇。日経平均株価は2.6%下落し、その後少し持ち直した。
日銀は声明で「経済・物価を巡る不確実性がきわめて高い中、YCCの運用を柔軟化し、金融緩和の持続性を高める」と説明。10年物国債を指し値オペの利回りで従来の0.5%から1%に引き上げる方針を示した。
SPIアセット・マネジメントのスティーブン・イネス氏は「これは将来のさらなる政策変更につながる可能性がある。ただ、焦点となるのはゆっくりとした変化だ」と指摘。日銀は円高の進行や急激な政策環境の変化を望んでいないとの見方を示す。
日銀は2%のインフレ目標を達成出来ていないとして、超低金利政策を維持する姿勢を示している。
日本の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は6月に3.3%増を記録、前月の3.2%増を上回った。日銀のインフレ目標を上回ったのは15カ月連続となる。
日銀の植田和男総裁はこうした価格上昇について、輸入価格の高騰といったコスト増が主な要因との見方を提示。輸入品の価格が落ち着けば下落するとの考えを示している。当局者もデフレを完全に克服したとは確信しておらず、賃金の上昇を確認したいとの考えだ。