トランプ氏が批判の人材多様化政策、大手企業は「価値あり」
ニューヨーク(CNN) 米首都ワシントン近郊で旅客機と米軍のヘリコプターが衝突して67人が死亡した事故をめぐり、トランプ米大統領は、米連邦航空局(FAA)による人材多様化に向けた取り組みを批判した。一方、「DEI(多様性、公平性、包摂性)」政策を進める米国の大手企業など支持派は、人材の多様化が事業にとって肯定的な効果につながると考えている。
トランプ氏は、少数派や障害者といった集団の雇用を増やそうとする取り組みが今回の事故にどうつながったのかについて証拠を示すことなく、「その可能性があった」とし、自身には「常識がある」と語った。FAAによる障害者雇用の取り組みはバイデン前政権下で進められたが、FAAの2020年から29年にかけての障害者雇用をめぐる計画は第1次トランプ政権時に発表されたものでもあった。
DEI政策によって死者が出る可能性があるとの指摘が反対派から出たのは今回が初めてではない。実業家のイーロン・マスク氏もロサンゼルスで発生した山火事をめぐって、地元の消防局や市や州の当局者による職員の多様化を進める動きを批判し、「DEIが意味するのは人々のDIE(死)だ」と述べた。
トランプ政権は連邦政府におけるDEI政策の撤廃を進めている。
実業界では、DEIの取り組みは一般的に、採用活動や従業員の訓練に加えて、さまざまな人種や性別、階級、宗教、そのほかの背景を持つ人々の代表を増やすための措置を組み合わせて行われる。
支持者は、DEI政策について、採用基準を引き下げるものではなく、雇用主が職務を検討する人材の幅を広げて、理論的には従来よりもさらに多くの適格者を見つけることができるようになると主張する。多様性や包摂性を推進する取り組みを放棄した企業は、優秀な人材を取り逃がす危険性があるとの指摘もある。
大手製薬企業で黒人として初めて最高経営責任者(CEO)に就任したケン・フレージャー氏は先にCNNの取材に対し、「DEIの最も優れた点は、誰もが能力を発揮するための平等な機会を持っているわけではない世界で、才能を開発し、公正な方法で評価し、隠れた才能や不利な立場にある才能を見つけ出すことだ」と語った。
ボストン・コンサルティング・グループが16カ国の2万7000人超の従業員の情報に基づいて実施した調査では、DEIへの取り組みは利益の増加や従業員の離職率の低下、従業員のやる気の向上につながることが示された。