米アップル取締役会、多様性推進のDEI方針を支持 撤回求める議案を批判
(CNN) 米アップルに対してDEI(多様性、公平性、包摂性)目標の撤回検討を求めた保守系シンクタンクの議案をめぐり、同社取締役会が反対票を投じるよう株主に勧告した。
アップルは10日の委任状で、「我々がどう行動するかは、世界最高の製品を作ることと同じくらいアップルの成功にとって不可欠と考える。我々は倫理的かつ誠実に、法令を順守しながら事業を営んでおり、我々の行動およびコンプライアンス方針は、我々が事業を営む基盤となっている」と強調した。
保守系シンクタンクの国立公共政策研究センター(NCPPR)は、2月25日に開かれる年次株主総会でDEI反対の議案を提出する意向を昨年9月にアップルに伝えていた。もし議案が通れば、アップルはDEI方針の撤回や一部撤回の検討を迫られる。
しかしアップルはこの議案について、同社の業務や方針を「不適切に制限」して「事細かに管理」しようとするものだと指摘。アップルは「確立されたコンプライアンスプログラム」を有しており、法令順守を徹底させるために取締役会が積極的に経営や法務の管理を行っているとした。
NCPPR側はDEIについて、訴訟や利用者の反発、従業員同士の分断といったリスクがあると主張。アップルには「5万人を超すと思われるこの種の差別の潜在的被害者」がいると述べ、もしも従業員に提訴されれば「数百億ドル」の損失が発生しかねないとしている。
アップルは1993年にサプライヤーの多様性プログラムを確立し、2017年には包摂性・多様性担当の副社長を初めて採用。「多様性ネットワークアソシエーション」と呼ばれる従業員団体が、86年以降、67団体結成されている。
米国ではDEI方針を撤廃したり、トランプ次期政権に受け入れられやすい名称に変更したりする企業が相次ぐ。
メタやウォルマートなどは、ドナルド・トランプ次期大統領らの圧力に屈してそうしたDEI推進の方針を転換した。
ただしDEI方針の変更を表明しても、反発を免れるとは限らない。今月6日にDEIの撤廃を発表したマクドナルドに対しては、少数派優遇施策に反対する団体「米国平等権利同盟」が12日に訴えを起こした。同団体は、マクドナルドにヒスパニックやラテン系の高校生を対象とする奨学金制度があることを理由に、誰もが公平に扱われるとした約束が完全に守られていないと主張している。
NCPPRはほかにも大手企業に対して同様の議案を提出しており、小売り大手コストコの取締役会は、反DEIの提案に反対票を投じるよう株主に勧告した。